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閑話:悪魔の独り言

本日2話目です。

我はキュロス。

魔王様の腹心、"7罪の大悪魔(デモーネ)"の1人、色欲を司るアスモン様に仕えている悪魔(デビル)だ。能力は《甘言》と《誘惑》。甘言で思考や判断力を奪い、誘惑で我の虜とし堕落させる。さすればその者は我の思い通りに動く駒となる。


現在、魔王様の命を受けたアスモン様の右腕として地上(リストアル)のホシュグァルと言う国に居る。因みに、それぞれの大悪魔(デモーネ)様が1人づつこの地に悪魔を送っている。


リストアルに来て初めて知ったのだが、人間共は我等と神の餌とりゲームを大戦だなんだと大袈裟に言い伝えているらしい。

需要と供給のバランスが崩れると糧を求めて神と悪魔で喧嘩(ゲーム)が始まる。結果、(生け簀)を神が確保すればその国は平和になって神に感謝し祈りによって神の糧が増え、悪魔が勝てば騙し合いや殺し合い、果ては戦争になり負の感情が増え我等の糧となる。

そのゲームを代々言い伝えるとは人間は面白い生き物だ。


ただ、このホシュグァル国だけはリストアルの管理者である精霊が神の味方に付き悪魔(我等)の介入を許さずゲームの景品とならない。


地上は精霊の住みか。天界、魔界同様、精霊界と言っても良い。

人間共は己等が地上の支配者であるような顔をしているが、人間やその他の動植物が住める環境を地上に作り出しているのが精霊達だ。

其奴等が神の味方をしてしまえば我等には手出しが出来ない。


それを面白く思わない魔王様が、ある日精霊と神や人間を引き剥がすいいネタを掴んだと喜び勇んでデモーネ様達にお話になったそうだ。

そのネタと言うのが、精霊王自ら加護を与えた人間を神の祝福(ギフト)を持った者達が率先して処刑したり幽閉したりと散々な目にあわせる事が続き、精霊王がその事を腹に据えかねているらしい。

そして今回、最後のチャンスとして精霊王が適性のある子に加護を与えその者の様子次第でこれからの関係性を見直すらしい。

と言う噂を聞いた魔王様はここぞとばかりに大悪魔様達に命を下したのだ。人間(エサ)共が過ちを繰り返す様に仕向けろ! と。


我はこの国に来てまず受肉出来る体を探した。来たのは良いが流石精霊に護られた国、加護が邪魔で憑ける肉体が見つからない……


暫く国中を彷徨った我が見つけたのは生後1ヶ月程度のこの娘(リリアナ)

育児疲れで爆睡する母親の目を盗んで誘拐され、誘拐犯に泣き声が煩いと殴られ、振り回され瀕死だった体は何故か精霊の加護の抵抗がなく、赤ん坊なので精神も押し込めるのが簡単で難なく憑く事が出来た。


誘拐犯は(リリアナ)を子の居ない商家に売り付けようとして悪事が発覚。半狂乱になって探し回る父親とショックで伏せってしまった母親の元に返された。その時の心労で母親はそのまま亡くなった。


その後、目を開けたこの体は神の祝福を受けたことを表す金目を持っていることが分かった。神々(あいつら)は気まぐれで、精霊達と違って祝福したからと言って人間共の管理はしない。すんなり憑けた理由が分かってスッキリしたわ。

金目は"希望(スペランツィア)"と呼ばれ、将来国の中枢に関わる仕事に付く者が多いと父親に説明しているのを漏れ聞いた。そして、それらスペランツィアがまとめて寮に入る事も同時に知った。


我の能力は近くにいればいる程強力な効果をもたらす。早い時期から寮に入り駒を増やしたかったのだが、この娘の父親が頑として譲らず(騎士もゴリゴリの職人集団には勝てないものなのね……。)結局入ったのは4歳になってから。我の入った寮には我を含め3人しかスペランツィアは居なかった。


寮にいる子供の世話はシュピントと呼ばれる精霊の加護を受けた者達。一応、今後入ってくるであろう子供達への信仰の種を植えるため世話係を虜にしておいた。我が出た後も悪魔を信仰するよう子供達を洗脳するだろう。

もちろん、我の1つ下のスペランツィアの2人も洗脳済みだ。


何だかんだと1つめの寮生活を終え、少し上級の寮へ移動する。すると驚いたことに同級にこの国の王太子が居た。我は密かに部屋で狂喜乱舞したものだ。なぜならこの国の王となる者は必ずスペランツィアを娶る。

 貴族、平民問わず国益となるギフト持ちで子を産める年齢であることが条件だ。


今のところ年齢的に我以外に妃となる可能性があるのは7つ上に1人と我の1つ下のリーツしか居ない。

 王子を虜にしておけば我が王妃になるのは間違い無いだろう。王妃となればアスモン様のお役に立てる。


ただ、順調だったのはここまで。

何の因果か精霊王の加護を持った娘も同級として入寮してきた。

多分精霊王が人間に課した最後の加護者(チャンス)だろう。この娘を粗雑に扱えば精霊達は他国のように物語や伝説の中の存在となる。


丁度いいとばかりに王子やその周りの男共をジワジワと甘言で虜にし、あの手この手で(カトレア)を邪険に扱ってみる。が、なかなかへこたれず少々イライラとしていた。


そんな日々を送っていたある日、2つ上級で我の一番のお気に入りの顔を持つルフトが我をチラチラとこちらを気にしている事に気づいた。

この娘(リリアナ)はどちらかと言えば可愛い顔をしている。綺麗な顔をしているカトレアと仲が良いルフトはリリアナには興味が無いものと思っていたが、そうでも無いのだろうか?

他の者に心を寄せている者は駒にしづらいので後回しにしていたがリリアナに興味を示すなら話しは別だ。グラドン同様すぐにいい駒になるだろう。


ただ、ルフトはなかなか接点が持てなかった。こちらを気にする割には近寄って来ないのだ。

どうにか接点を持とうと考えた末、ダンスのパートナー変えを提案。我の能力《甘言》は耳元近くで囁くと効果が高まる。ダンスはうってつけ。勿論講師は洗脳済みで我の言いなりだ。


無邪気を装いルフトのパートナーになれたことを嬉しいと伝えいざ甘言!!

……と言う場面で、突然に名を呼ばれた。あまりの驚きに隠している羽が飛び出そうだった。我慢し顔色も変えなかった我を誉めてやりたい。


その後、しばらく警戒し何のアプローチもせずに()()()()で過ごした。

ルフトもこちらを気にはしていたようだが、時間の流れと共に普通に接するようになった。


その間、我はルフトのもつギフトの事を調べた。奴のもつギフトは刻を操る。これは当人以外、この地上(リストアル)にある全ての物、生き物に作用する。

王家や貴族がかなり警戒し幾重にも封印系のギフトを施した事から分かるように、ある意味万能であり恐ろしい能力でもある。

そして、我の真名を知り得たのはその封印を破って能力を使ったからだと推測した。


我からしてみたら"厄介"な能力。地上(ここ)にいる限り我も効果の及ぶ範疇にいる。

我を殺そうと思えば直ぐにでも可能な能力。発揮される前にこちらが殺してしまうか駒にしてしまわなければ……と夜、寝静まった頃を見計らい一気に虜にしてしまおうとルフトの部屋に向かった。


ここでも予想外の事が起こる。ルフトに気づかれたのだ。……子供は寝てる時間だろ! 何で起きてるんだよ……心のなかで叫ぶがもう遅い。

ルフトは底冷えするような低い声で我の顔を鷲掴みにしたまま誰かと訪ねてきた。何と答えようか迷ったが、一番興味を引きそうな真名を名乗る。そして悪魔である我を葬る為刻を止め無いよう訳知り顔で話し続ける。


案の定、奴は食いついてきた。先ずは殺されずに一安心。ある程度の情報を公開しつつ、奴からも情報を聞きだす。

推測通り奴は時間を巻き戻したらしい。14年と想像以上に長い年月だ。とても人間1人の神力で戻れるものでも無いと驚いたが……話を聞いて納得した。


王族の血筋を2人、他にも何人かのスペランツィアを殺し遺体に残る神力を取り込み能力を発揮したそうだ。王家縁の者は神力がかなり多い。1人分でも10年は有に戻れるだろう。


そして、話しはこれから起こり得る事についてに移る。

え? リファルの婚約者がカトレア? え?? 詳しく話を聞けば当初の予定とは違う形で目的は達成したようだが、最終的には我が逃げ帰る事になったと言う。


ダメじゃん! ダメダメ!! 不様に逃げ帰る様な事だけはあり得ない!!!!

ってことで、先を知るルフトを取り込むために手を組む事を提案する。奴の能力は怖いので対等の取引をするつもりだったが……


うむ。こちらもじっくりジワジワと囁き続けてみよう。


キュロスはニヤリと密やかに嗤った。

読んでいただきありがとうございます。


次回からはまたライク目線の話に戻ります。

引き続き読んで頂けると嬉しいです。

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