第59話:お転婆姫様登場
種族"ハイ・ヒューマン"
この国の王族のみしかいないという希少な種族である。王族たる所以はこの"ハイ・ヒューマン"である事が大きい。そしてこの種族はこの国において、なにより特別なのだという。
特別な理由は全てのステータスが大幅にアップするという能力なのだがあまりピンとこない。
「ふふ~ん、分からないのも無理ないわ。でも今こうして声を聞いているだけでも変化は分かるでしょ?」
確かに、今のリジェデリカ姫の声は心臓に響く重たい声になっている。
「これはね。声に私の魔力が加わっているせいなの。溢れ出す私の魔力が五感も含むすべての動作に影響を与えているのよ」
ラフィーとエリスは「へぇ~」と言っているだけだが、イツキは「すごいな」と深く感心していた。
この姫様の話が本当ならこれは物凄くすごい事である。
自身のあらゆる能力が向上しているということは、身体能力だけじゃなく、潜在魔力も増えているに違いない。そして魔法も大幅に上がっているのだろう。通常の【トランス】はエリスの出身の街のジーンギルド長みたいに魔法が扱いやすくなったり、一つの分野で能力が上がるが、"全て"が上がるのはチート過ぎるトランスだ。
「さすがは王族ですね。【トランス】の規模が違います」
「あら、あなたは分かっているのね」
ふふっと笑い、リジェデリカ姫は笑顔になる。
と、和やかにしている途中でこの部屋に乱入者がやっていきた。
「姫様ーーー!!見つけましたよーーーー!!!」
「げっ!?」
ドカーンと扉を突き破りやってきたのは、ガチムチの筋肉が特徴の強面お兄さん。髪は短髪で少し色白い。腕の筋肉が大きくイツキの4倍はあるかという太さだ。突然現れたこの男性は多分、このお転婆お姫様の関係者だろう。姫様が本気で嫌そうな顔にしてげって言ってるし。
「姫様が【トランス】した時に感じる魔力があり、急いでこちらに来た次第です。さぁ帰りますよ」
「ゴードン...くっ!しくったか...イツキあなたのせいですよ!!」
リジェデリカ姫が僕に逆ギレする。
えー勝手に【トランス】したのそっちじゃんと思ったが、護衛の方がいるところで不敬な事は出来ない。
「むっ!急いでいたゆえ、申し訳ない。私はこのリジェデリカ姫の護衛隊長を務めている。ゴードン=アルバルムと申します」
おっと、見た目に反し意外と律儀な人だ。
「ご挨拶ありがとうございます。僕はイツキと言います。後ろにいるのは冒険者仲間のラフィーとエリスです。
イツキはふと二人を見てみると、いきなり強面の人が入ってきたのに驚いていたのか。ポカーンとした表情のままだ。
「では、長居はご迷惑になると思いますで、私どもはこれにて失礼いたします!」
大きな体格で大きな声だ。ゴードンという男性はひょいとリジェデリカ姫を持ち上げた。なんとお姫様だっこだ。
「っ!!ゴードンお主!不敬じゃぞ!!」
リジェデリカ姫はバタバタとして抗議したが、ゴードンという男には微動だににしない。
(あれっ?リジェデリカ姫がいつの間にかトランスを解いている?)
イツキはふと思ったがそんなに深くは気にしなかった。
「それでは、失礼!!」
更に軽いお辞儀をして、ゴードンと姫様とお付きの騎士2名が僕たちの部屋を後にした。
「ゴードン!いい加減に離さんか〜〜!」
ゴードンに持ち上げられたリジェデリカ姫が断末魔のような声を上げながら、猛抗議していた。そしてその声が遠くなり消えていった。そして部屋が静かになった。
なんて、嵐のようなお姫様なんだ。
「ふぁ〜あ、、ねぇそろそろ寝ない??」
そう切り出したのはエリス。ふと気づくともうだいぶ夜も遅い。
「そうだね。寝よっか」
この日の夜は3人仲良くぐっすりと眠る事ができた。
次の日、目を覚ました3人はこの宿の受付の方へと向かっていった。朝方、女将さんから「イツキさんに今、お客さんがきてる」そう言われて1階の受付前に来た。
女将さんは「あんたら、何しでかしたんだい?」とボソッと言われた。
当然、イツキの頭の中は「?」となった。
とりあえず、準備を済まして、下へ降りていく。
そこには昨日出会ったゴードン護衛隊長の姿があった。
「こんな朝方に失礼。お三方には王城に来て頂きたくその旨をお伝えしに来ました」
「「....えっ!?ええええぇぇぇーーーー!??」」
ラフィーとエリスは絶叫。イツキは冷静に今日も忙しい一日が始まったなと悟った。




