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第53話:看病をする

悪魔たちの襲撃から一夜が明け、今は壊れた家屋などを修繕したりと復興中である。冒険者たちはジーンギルド長の指示のもと、冒険者を派遣し復興の手伝いの指示を行っている。ギルドの受付嬢たちもその対応やらでてんやわんやしながら、働いていた。

今回の騒動では、死亡者は出なかったものの、負傷者が多数おり回復魔術を使える冒険者達は、治療の為大忙し。イツキも手伝おうとしたが、ジーンギルド長とグリアにストップがかけられた。


「イツキ君はエリス看病を集中的にお願いしたい」

二人からのお願いで断る事が出来なかった。エリスは昨日のゴーレム達を止めた際に全魔力を使い果たし、倒れたまま昨日から目を覚ましていない。相当な負担がかかっていたと今になって思った。


「【回復ヒール】」

女性の姿でいるイツキはそっとエリスの身体に手を当て回復魔術をかけた。昨日から合わせて8回目の回復である。


「全然目を覚まさないね....」

もう一人心配そうに見つめる人がいた。ラフィーである。彼女は今、桶にお湯を入れタオルを温めエリスの身体を拭こうと準備をしているところだ。


「街中のゴーレム達に自分の魔力を乗せて止めたんだ。相当な負荷があるはずだよ」

イツキもこんなに数多くの回復魔法を使ったのは初めてである。だか、昨日からつきっきりで回復魔法をかけているので、そろそろ目が覚めてもいいはずだと思っている。


「今できることをやっていこう。街の復興の方はこの街の冒険者に任せて、今はエリスの事に集中しよう」


「うん...そうだね」

イツキとラフィーの二人の看病は続く。


「そういえば、本来は今日この街のお祭りの日だったんだよね」

ラフィーは思い出したかのように突然と言い出した。


「そういえばそうだった。この騒動がなければ今頃街は賑やかな一日なんだろうね」

今日は、ゴーレムに感謝を伝える祭りが執り行われる予定だったが、悪魔たちの襲撃により延期になってしまった。この街の状況では祭りどころではない事が分かるが祭りは中止することなく執り行われるらしい。


「しかし、すごいよな。こんなことが起きたのに中止することなく祭りをやるんだから」

イツキは素直にこの街の住人の意識の高さに関心を覚えた。

「なんかね。この街の人達のゴーレムに対する意識が変わったってグリアさんが言っていたの」

「意識...?」

「うん、今までね。ゴーレムを大事にしてきたのは間違いなんだけど、それでも雑に扱ったりして感謝の気持ちが薄れてしまった部分があるって言ってたの。それで今回のようなゴーレムの反乱が起きたんじゃないかって街の人達が噂をしてるって」


「なるほどそういう"理由"にしたのか...」

イツキはラフィーの話を聞いて整理した。今回の騒動について、この街の人達は悪魔の仕業だということは知らないらしい。あくまでゴーレムの反乱ということにしている。

理由はいくつかあるが、大きな理由がこの街が悪魔に狙われたきっかけがエリスにあることだ。この街の人達が原因がエリスにあると分かれば、少なからず、エリスは迫害を受ける対象になってしまう。いくらグリアさんがいるとはいえエリス自身はものすごく気にするだろう。そうなった場合エリスは完全に孤立してしまう。そうならないため、今回の騒動は原因不明のゴーレムの暴走として処理するつもりらしい。


「根回しの方は、ジーンギルド長とグリアさんがやってくれてたんだって」

「だろうね。恐らく噂の発信源はあの二人だ」


「あっ!それともう一つの噂があって、青い瞳の白い少女ゴーレムについて噂も聞いた?」

「ん?いいや。それは知らないな」


「なんかね、ゴーレムの女神様って言われているんだって」


「女神様??どうして?」


「今回のゴーレムの暴走を止めた時にエリスちゃん光っていたじゃない?その場面を目撃した人って意外と多かったらしくて、今、街の復興と同時にその少女ゴーレムを探しているんだって」


そう言われると納得する。エリスのトランス姿は、お世辞なしで幻想的だ。ずっと見ていられるほど美しい姿である。


「ただ、その正体がエリスちゃんだということも広まっているけど、、」


「そういうことか、、お見舞いに来る人が多いのは」

実はエリスが眠っているこの部屋にたくさんの人がお見舞いに来ていた。俺が回復をかけて続けている最中にも来るほどだ。最初は理由が全然分からなく、本人が眠っているということもあり、すぐに帰って貰っていた。この部屋の隅にお見舞い品がごそっと置いてある。


「ホントに早く目覚めてほしいね」


「うん、ホントに。でももうそろそろ目が覚めてもおかしくないはずなんだけど...」

そう言いかけた時。


「んっ....あれ?イツキ..?」

エリスが目を覚ました。


「エリスちゃん!良かった!やっと目を覚ましたんだ〜」

ラフィーが勢いよく抱きつく。


「グェッ」

エリスは抱きつかれた衝撃でカエルのような声を漏らす。


「ラフィーちゃん、離れて...」


「あっ!ごめんね!そうだっ!目を覚ました事、グリアさん達にも伝えてくる」

ラフィーは落ち着く様子もなく勢いよく部屋を飛び出した。


イツキとエリスが2人きりになった。

イツキはとりあえず、

「おはよう、頑張ったね」

エリスに対して労いの言葉を送った。



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