第5話:最初の町へ向かう
「そういえば、何でこんな森の中で一人でいたの?」
僕は、負傷したラフィーの足を治療しながら、率直に思った疑問をラフィーに問いかけた。この森がどれほど危険かは知らないがこんな所に一人で来るのは、少々無謀だと思っていた。
「実は…お母さんが病気でお金が必要になったんです。それで、薬草取りの仕事をしていたんです」
ラフィーが難しい顔になりながら、そう言った。
「そっか。お母さんの為だったんだね。ラフィーはえらい子だね!」
僕はラフィーを励ました。
「それで、あのー、、旅人さん!ホントに助けていただいてありがとうございました。何もお返しとかできないですけど、」
ラフィーは、僕に感謝した。とそこで自分がラフィーに自己紹介していないのに気付いた。
「ううん、お返しとか全然平気気にしてないよ。それよりも僕の名前を言ってなかったね。僕はイツキっていうんだ。よろしくね!」
僕は遅くなってしまったが、ラフィーに名前を伝えた。
「イツキさん。。あなたも素敵な名前ですね。」
ラフィーのその一言に一瞬ドキッとした。
その後、一回「んんっ!」と咳払いした。
「倒した魔物はどうする?」
そう聞くと、
「ここで埋葬してあげましょう。今、自分の持っているポーチじゃ入らないから、、」
ラフィーが答える。
「なら、僕があずかってもいいかな?」
「えっ!?」とラフィーが驚いた。
「【空間収納】(ストレージ)」というと魔物がふっと消えた。僕の収納空間に移動したのである。
これも師匠との修行で得たスキルである。
「消えちゃった。。。」ラフィーがぽかんとしていた。
そして、いきなりラフィーに近づいた。
「さっそくだけど、ラフィーにお願いがあるんだ!」とラフィーに言った。
「イツキさんなんでしょう?」
「僕を君の町に連れてってほしいんだ」
------------------------------------------------------------
「見えてきました!ここが私の住んでいる「シクレトの町」です!」
ソフィーが指さしていったので、僕は指をさした方向に目をやった。
そこには、周りを塀で囲まれた町があり、二人の門番が立っていた。確かにそこには町があった。
「へぇ~結構大きな町なんだね。」
僕は少し驚いた。予想していた大きさより2倍大きい。
「そうなんですよ。意外と大きい町なんですよ。あっ!少し待っていてください。門番の衛兵の方に話をしてきます。」
そういうと、ラフィーは、先に走っていった。
スムーズに町に入れてくれるよう説明しにいったのだろう。
「ラフィーちゃんは優しい子だなぁ~」
ついつい口に出してしまった。はたから見るとロリコンだと思われかねないが決して僕はロリコンじゃない!
そして、ラフィーと門番二人に近づいていくと、
「イツキさん!よかったですね!町に入れますよ」
元気いっぱいで僕に言った。
「ホントに!?ありがとう!」僕はラフィーに感謝した。
「おっ!君がラフィーちゃんの言っていたイツキ君か!もっとガタイのいい兄ちゃんかと思ったぜっ!」そう言ってきたのは門の衛兵の一人だった。
「わりぃ。挨拶が遅れたな。俺はこの街の衛兵をやっている。ガトンっていうんだ。」
すごいむさ苦しい兄ちゃんである。
「でっ!こっちが相棒のリーンだ!」
「自分の自己紹介ぐらい自分でやらせろっ!ってすまなかったね。リーンです。よろしく」
この人はガトンさんよりむさ苦しくなく、落ち着きがありほっそりとした人である。
「ガトンさんとリーンさんですね。僕はイツキといいます。今回は町に入れさせてもらい、ありがとうございます。よろしくお願いします。」
前世の営業の挨拶張りに声を上げ、お辞儀もした。
そうしたら、ガトンさんが「礼儀正しい奴だな!わははっ」と笑った。
「ガトンさんとリーンさんいい人ですよね!私はいつもお世話になってます!」
ラフィーも笑顔になりながら言った。
「では、さっそく町に入りましょう!」と僕の手をつかんだ。
「あっ!まって!」僕は女の子と手をつなぐのなんて何年ぶりだ?と思ったが、お構いなしにラフィーは手を強引に引っ張った。
こうして、異世界に来て最初の町に足を踏み入れた。