第46話:深淵魔法を使う!
まだ僕と師匠の二人での修業時代に話は戻る。
深淵魔法とは、10年の修行時代に身に付けた扱いが難しい魔法の一つである。
「この魔法は極めて特殊だ。まずこの魔法が扱う系統は理や摂理などだ」
「ことわりやせつり??」
「そう。今まで炎や水など魔法は"現象"系統を扱ってきたが、今回教える"もう一つ"とこの深淵魔法はそれより数段上の理や摂理といった特殊な領域に踏み込む」
イツキはごくっと喉を鳴らす。
「そ、そんなの人の僕に教えていいんですか?」
「神が信頼を置く者になら教えても大丈夫となっている。だが扱いには気を付けてくれ。扱いを誤ると取り返しのつかない事になるからね」
「わ、分かりました...」
「では、早速教えよう!!だが教えられることは少ない!とにかく扱いが難しいからな!だがら今から教えるのはこの深淵魔法を"身体付与"と"魔法付与"のみだ!心してかかるように!」
こうして深淵魔法の修行が始まった。
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そして、現在。
今イツキは深淵魔法を身に纏い、クレアに接近しつつ"黒い炎槍"を生成し、クレアに目掛けて放った。対する彼女は迫りくる炎の槍を魔法を使わずに避け、さらにイツキの20m先の所まで瞬間移動をしていた。
「あなたがその魔法を使うなんて聞いてないのだけれど...それと深淵魔法がどんなものなのかご存知?」
「今、初めて見せたからね。それにどんなものかもだいたいは知っているよ。"消滅"だよね」
炎なら対象が消失し、水なら溶け、雷なら焼け、土なら崩れ、相手の存在を許さないほどの効果を与えるものだと認識している。そしてイツキ自身による攻撃は体が老いて朽ちるまで
「半分正解で半分不正解ってところね」
ボソッと彼女は呟いた。
「...?」
僕は上手く聞き取る事ができなかった。
「そろそろ決着つける...」
イツキの表情が本気になる。クレアもそれを察した。
互いに一瞬の静寂が訪れた後、先に仕掛けたのはイツキの方だった。自分の周囲に風を集め、イツキの頭上に濃密度の魔力を帯びた小さな風の渦を瞬時に発生させた。やがてその風の渦は黒く染まり、黒い風の渦となる。
「黒死風!!」
そう叫んだイツキの周囲の風から幾刃もの風の刃がクレア目掛けて放たれる。
「冗談きっついわ...!!」
さすがにクレアの表情から余裕が無くなっている。無数の黒風の刃に対し、彼女も無数の空間の盾を展開する。が、軌道をわずかに反らすことはできるがどれもことごとく切断される。
数十秒間の攻防戦が続いた。イツキは表情を変えてないが、クレアの方は防御するのに必至だ。
「くそっ!...空間魔法が使えれば...」
なぜ彼女が空間魔法を使わないのか。それは厳密には"使えない"のが正しい。深淵魔法の本質は消滅であり、触れれば消滅してしまうのである。それは空間でも同じことであり、深淵魔法を空間に取り込むとその空間が"消滅"してしまうのである。もちろん、クレア自身も対策はしてある。実際何個かの別空間を持っておりストックはある。だがこれはいざという時のためのストックであり、使えなくするためのものではない。さらに空間魔法は使い慣れが非常に大事な魔法でもある。安易に使い捨てもできない。
身体を左右上下に動かし、つど空間の盾を展開して避け続けている彼女にイツキはさらに猛攻をたたみかける。先ほどの黒風に黒雷を放った。その黒い稲妻は黒風の渦に導かれるかのように混ざり合わさり轟音が轟く黒雷風となった。
クレアはさらに表情が苦しくなる。
(もう...ここまでかな...)
クレアは逃走する行動に移った。自分自身を別空間へと移動しようとしている。
「逃がさない!黒雷刃!」
イツキは電撃を帯びた凄まじい速さの一撃風の刃を放つ。
「っ!!」
逃げようとしたクレアは途中でやめ、回避する。イツキの放った渾身の一撃は自身が放った風の刃をも切断し、彼方へと消えた。
(あんなもの一発でも受けたら、致命傷ね...)
逃走しようとするクレアにイツキは更に容赦なく攻撃を仕掛ける。
「エリスの魅了を解け!そうしたら、攻撃は止める」
イツキの口調が強めになる。
「...ふっ..分かったわ。解くから攻撃やめてくれる?」
彼女は両手を上空に上げ、降参のポーズを取った。それを見たイツキはすぐに攻撃をやめた。
「これだけの実力がありながら、まだまだ甘ちゃんね」
クレアは少し笑うと自分自身を空間魔法をかけ、別空間へと逃げようとした。
「なっ...しまった!!」
一瞬の気の緩みから相手に逃げるチャンスを作ってしまった。イツキはすぐに黒雷刃を放ったが遅かった。ギリギリ刃が届きそうな所でクレアは消え逃してしまった。空を切った黒雷刃は地面にあたり、大きなクレーターを作って霧散した。
イツキの強敵との対戦は相手に逃げられるという決着についた。戦いは終わったが、まだエリスの魅了が解けていない。
イツキはラフィーとエリスのいる所に向かった。




