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第41話:戦闘開始①

広い森の中、ジーンギルド長は少し開けた場所までラプラスを誘導する。


「ラプラス君だっけ?君には悪いけどエリス君から遠ざけてもらったよ」

ジーンギルド長はラプラスに余裕な表情を見せて言う。ジーンギルド長の周囲には、すでに新しい魔法である"水球ウォーター・ボール"と"雷球サンダー・ボール"を5球ずつ生成し浮遊させていた。


「ぜんぜん~。私は気にしていないよ~。ギルド長さんは優しいね~」

ラプラスも余裕な表情を見せる。

「相手が女の子でも優しくしないとね」

「ジーン!な~に。呑気なことを言ってやがる!」

グリアがジーンギルド長の頭をコツンッ!と叩いた。"いてっ"と小さい声が漏れる。


「ふふっ。君たちは仲いいね~。でもおしゃべりはここまで、、、だよっ!!」

ラプラスはそう言うと、"高速"で移動し、グリアの目の前まで一瞬で現れた。

左足を前に出し、右拳を後ろに引き、右ストレートのパンチを繰り出そうとしていた。繰り出されたパンチはグリアの腹部に当たり、グリアは吹き飛ばされた。


「うっ!!」グリアの嗚咽音がした。

「グリアッ!!」ジーンギルド長が叫ぶ。対して、パンチを繰り出したラプラスは手をまじまじと見て、違和感を覚えていた。


「うぅ...危なかった...」

「無事だったか!」

吹き飛ばされたはずのグリアはすぐに起き上がった。


「何か仕込んでいるの?」ラプラスが初めて真剣な表情と声を発した。

「まぁあな。念には念をだ」

そういって、グリアは服を上げ、腹部に巻いてある薄い布らしきものを見せつけた。これはグリアのスキル【再利用リサイクル】によって作り出した特製の低反発の布である。


「ふ~ん。でもそんなのあっても意味ないけどねっ!!」

ラプラスがまた一瞬でグリアの前にきてパンチを繰り出そうとした。やはり動きが速い。だが、

「させないよ!!」

ジーンギルド長が雷球サンダー・ボルトをラプラス目掛けて放ち、それに気づいたラプラスは「チッ!」と舌打ちしながら回避した。


「ジーン、ありがとう、助かった」

「いえいえ。お互い様ですよ」

二人はお互いに感謝しつつ、今の状況を分析する。正直言って今のままでは戦いに決着がつかない。2対1にも関わらず、相手はそれに対応している。戦闘でいえば相手の力量の方が上手なのは明白だった。なにより一番厄介なのは、あの移動速度である。瞬間的に早くなるあの動きは非常に厄介であり、どうしても反応が遅れてしまう。


「どうにかして一発入れれば...まだ勝機はあるのに」

グリアが呟く。

「んっ?グリア。それはどういうことだい?」

ジーンギルド長が聞いてくる。

「あいつの動きを抑えて"これ"を使うんだ」

そう言って、ジーンギルド長にひっそりと見せたのは、長さ30cmぐらいの鎖だった。鎖の先端は針のように尖っている。


「これは...?」

この鎖もまたグリアが作り出した物のひとつであり、正確にはこの鎖自体が"ゴーレム"である。この鎖の能力は対象を拘束し身動きを取れなくするに加え、拘束中は魔法の一切も使えない能力が付与してある。さらに見た目は短いが能力発動時は長さが自由に伸縮するようになっている。


「これで奴の動きを封じたいが...問題はどうやってこれを当てるかだ。正直、あの素早さじゃ当てるのはかなり難しい」

グリアが眉間にしわを寄せて考える。対してジーンギルド長は意外と冷静だった。


「グリア。気づいたことが事があるんだが、もしかしたらその鎖を奴に当てられるかもしれないぞ」

「ん?それはどういう...」

「な~に。二人でしゃべっているの?私の事忘れられるのショックなんですけど~」

と二人が会話している間にラプラスが割って入ってきた。


「「ッ!!」」

いきなり二人の間にラプラスは現れ、二人の反応が遅れた。ラプラスは最初にジーンギルド長に一発、次にグリアに一発パンチをくり出した。二人ともなんとか急所に当たらずに防ぐことができた。そして、ジーンギルド長は水球ウォーター・ボールで反撃をした。ラプラスはそれを難なく躱す。続いてグリアがラプラスに近づき、蹴りを入れたがそれも躱される。そしてラプラスに後ろに後退し距離を取ったところでグリアはジーンギルド長の元に戻ってきた。


「ジーン!大丈夫だったか?」

「いや、左腕をやられた...」

見るとジーンギルド長の左腕が脱力しているかのようにぶらぶら揺れている。恐らく骨が折れているのだろう。

「だが、腕一本で助かったよ...それよりもだ。グリア。奴について疑問に思った部分があるんだ」

「さっき言いかけた事か」

「そうなんだ。実は...ラプラスから身体強化などをかけている痕跡が全く感じられない」

「それはどういうことだ...?まさか身体強化魔法無しで素であの速さなのか?」

「いや、それはあり得ない事だと思う。たださっきのパンチの攻撃を思い出してもそうだけど、一瞬で移動してきたあの速さに対して、パンチをくり出した速さがどう考えても遅いかったよね?」

「あっ。そう言われてみれば...」

言われてみると、確かにラプラスが移動してきたスピードと攻撃をしたスピードが全く違った。仮に身体強化をかけているなら、目にも止まらいない速さの一撃を自分たちにぶつけているはずである。確実に何かからくりがあるに違いなかった。


「ま~た。二人しておしゃべりしているの?それとも作戦会議~?私こう見えて無駄な時間は好きじゃないなんだよね。だから悪いけどあんたたちにたくさん時間かけるつもりは無いから!」

ラプラスは体を構え、攻撃の準備の姿勢に入った。

ジーンギルド長とグリアは「ふ~」と一呼吸入れた後、戦闘態勢に入った。

二人の顔に汗がにじみ出ている。

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