第40話:それぞれの戦闘
「イツキをどこにやった!?」
ラフィーがラプラスに問いかける。
「ふふっ!焦っている顔がいいねっ!その答えだけど、彼はお姉さまと一緒にいるはずだよ」
「お、お姉さま...?」ラフィーは困惑した。
どうやら、イツキはラプラスの姉に連れ去られたようだ。イツキの事だから大丈夫なはずだが、それでも心配になる。
「他人の心配より自分たちの心配をした方がいいんじゃない?」
ラプラスがそう言いながら、いきなりラフィーに向かって攻撃を仕掛けてきた。ラプラスの不意打ちの蹴りに対し、ジーンギルド長とグリアさんの反応が遅れる。
(ふーん、この程度も反応できないか...)
そう考えながら、ラプラスはラフィーの腹部に高速の蹴りを繰り出してきた。直撃すると思われたが、ラプラスの蹴りはラフィーの足と衝突した。ラフィーはラプラスの高速の蹴りに反応したのである。
「っ!」
ラフィーは苦い表情になる。想像以上の重い一撃だったらしい。
「へぇ~。この速度に反応できるんだ~」
くすくすと笑うラプラス。
ラフィーは【危険察知】と【俊敏】のスキルによって何とか反応ができた。
「ラフィー君!!すまない」ジーンギルド長がラフィーの前に出てきた。
「ラフィー君。こいつの相手は私に任してはくれないだろうか?見たところまだ君は戦闘経験が浅いと見える。ここはギルド長として責任を持って対処する!」
「ジーンギルド長...ありがとうございます」ラフィーが呟く。
「ふふっ!あなたに私の相手が務まるの?」
「いや、俺もいるぜ!アプラス!お前は俺とジーンで相手だ!」
「2対1ですか...まぁいいでしょう~。ではエリスちゃんの最初の相手はあの猫の獣人だね!」
「グリアさん!ジーンギルド長!」
ラフィーが二人の名前を呼ぶ。次に口を開いたのは、グリアさんだった。
「ラフィーちゃん、すまない!エリスの事頼んでもいいかい?」
グリアさんは目線をラプラスに向けたまま聞こえる声で言ってきた。ラフィー自身も分かっていた。今の自分の実力じゃラプラスには勝てない。ここはギルド長とグリアさんに任せた方が適任だということを。だが、
「ま、負けないでください!」ラフィーは二人に精一杯のエールを送る。
「おう!任せろ!」グリアさんは親指をあげ、続くようにギルド長も親指を上げ反応した。
「そうだ。ラフィーちゃんの方も気を付けてくれ。あいつ自身戦闘経験はほとんどないが実力はおそらく、かなりある方だ。今は操られて理性がない分、実力も未知数だ」
「分かりました!」
こうしてラフィーVSエリス、ジーンギルド長&グリアVSラプラスの戦闘が始まった。
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ジーンギルド長とグリアは、相手の様子を伺った。対して、ラプラスは余裕を見せる。
「君たちで私に勝つつもり~?」
あからさまな挑発をかけてくる。だが二人は冷静だった。
「ああ!勝つさ!そして、エリスを取り戻す!」
グリアが宣言する。
そして、二人は【変身】をした。ジーンギルド長は"エルフ"にトランスをした。
続いて、グリアもトランスをした。肌の色は変わらないかったが、髪がまるで炎のような燃え盛る赤髪に変色した。グリアの種族は"ドワーフ"である。ドワーフにしては珍しく、烈火のような雰囲気に身を包んでいる。まるで"鬼"を連想させるような風貌である。
「グリアの【変身】はいつ見ても綺麗だ」こんな時にジーンギルド長は褒めてきた。
「な、なんだよ、、こんな時に!」グリアは焦る。
「きゃ~グリアちゃん素敵だよ~」
続いて、ラプラスが褒めてきたが、グリアの表情が天から地に下がるほど無表情になった。
「へっ!お前には褒められても嬉しくないな!」
グリアのアプラスに対する拒絶が半端ない。隣にいるジーンギルド長も一瞬ビクッとなった。
「さて、おしゃべりはここまでにしておこうか!」
いきなりジーンギルド長が無詠唱魔法を繰り出した。火球を約"10球"を一瞬で出し、それらすべてをラプラスに向けて放つ。
「ふん!こんなちっぽけな魔法なんて、どうてことはない!全て消し飛ばしてあげるよ!」
ラプラスが自信満々で言ったが、ジーンギルド長は何も考えずに放ったわけではなかった。
10球全ての火球は一直線に向かわず、くねくねと変化しながら向かってくる。
(っ!!くそっ!狙いが定まらないっ!)
ラプラスは距離を取りながら避け、避けられた火球は小屋の屋根を突き破る。そして、ジーンギルド長は10球の火球の内、5球は追尾を付与している。突き破れた屋根からラプラスは逃げ、火球が後を追う。
「よし!エリスと距離を取った!これで少しは戦いやすくなったかもしれない。グリア!やつを追いますよ」
「ああ!」
外に出ようとした時だった。グリアがラフィーの方へ一瞬が振り向いた。
(エリス....ラフィーちゃん....)
グリアが二人の事を心配する。
「グリアー。早くー!」
ジーンギルド長の呼ぶ声がして、グリアはラプラスの方へ向かった