第4話:女の子を救う!
僕はこっそりと木の陰から戦闘をうかがった。
戦っているのは、なんと肩掛けポーチをした女の子である。背丈は小さく15歳ぐらいで、茶髪で短髪の子である。
そして何より特徴的なのが猫の耳と尻尾があり、獣人だと思われる姿をしている。
相手は、黒の毛並みの狼で目が充血しているみたいに真っ赤である。
「はぁ、はぁ、、このっ!」
女の子が非常用だと思われる短剣を手に相手をしているが、なんだか動きが鈍い。
対する黒狼は慎重なのだろう、ある程度の距離を保ちつつ、女の子を狙っている。
最初に動いたのは、女の子の方で、短剣を狼に対し左下から右上にかけ薙ぎ払った。だが黒狼は優雅に躱す。
「・・・っ! あの子、足を怪我しているのか。通りで動きが鈍いわけだ」
恐らく、戦闘中に怪我をしたのだろう。左足をかばいながら、戦っている。
「このっ!あっちに行け!」
女の子の方はだいぶ焦りが出てきている。長く持たないと分かっているんだろう。対して黒狼の方は確実に仕留めんばかりの気迫を出している。
「これは助けに出たほうがいいかもな。でも武器がない。どうするか...」
そう考えていると、今度は黒狼の方が動き出した。女の子は黒狼の体当たりを躱したがその後、痛めた足のせいで、体を支えられず、地面にしりもちをついた。その隙を黒狼は見逃さなかった。切り替えして再度、女の子を襲う。
「きゃゃゃぁーーーー!」女の子が叫ぶ。
「これはさすがにまずい!「「身体強化」」と【聖剣】の派生技スキルを使用した」
【身体強化】はその名の通り筋力を強化するものである。
物陰から出て黒狼の頭にパンチをおみまいしてやった。急に現れた僕のパンチで黒狼は吹っ飛び。気絶した。
「大丈夫?」足を怪我していて大丈夫ではないだろうけど、一応聞いてみた。
「えっ…あっ!はい!」女の子は急に現れた僕に驚きながらも返事をしてくれた。
「足怪我しているようだけど、立てそう?」
「このくらい大丈夫です!立てます!っ!」何ともないと伝えたかったのだろうか。急に立ち上がったが、立った瞬間少しよろけた。
「無茶しないで」優しくフォローする。
「ありがとうございます...あの...あなたは冒険者の方ですか?」
女の子が聞いてきた。
冒険者、やっぱりこの世界には冒険者と呼ばれる人がいるんだなと思った。
「いや、僕は冒険者じゃないよ。たまたま歩いていたら、君とあの黒狼が戦っている場面に遭遇しただけの旅人だよ。それよりも君は?」
とりあえず、僕の身分は「旅人」と言った。まぁ嘘はついていない。実際に前の世界とこの異世界を渡ってきたから、旅をしたと過大解釈ができる。
「あっ!すみません。助けていただいたのに。わたしはラフィーミヤって言います。」
「ラフィーミヤちゃんか。いい名前だね!」
「ありがとうございます。普段ラフィーと呼ばれているのでラフィーでかまいません。」
これが異世界に来て、最初に遭遇した人。「ラフィー」との出会いである。