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第36話:意外な乱入者

「エリスッ!!」僕は叫んだ。

迂闊だった。ラプラスの戦闘に集中しすぎたせいで気づかなかった。まさかもう一人仲間がいたなんて。しかもエリスを抱えているのは、このギルドの受付嬢であることも驚きだ。


「お、お姉様...」

ラプラスは、はっきりとそう呟いた。そして、若干だが怯えた表情を見せる。


「ラプラス。あなた、こんなところで何をもたついているの?計画には無い戦闘は控えるよう言ったはずだけど」


「ご、ごめんなさい...」

二人はどうやら姉妹であるが、上下関係がはっきりとしていた。

だが、なぜ受付のお姉さんが?スパイとしてこの街のギルドに潜入していた?分からない事だらけだが、そんなことより、エリスのことが心配だ。


「受付のお姉さんが何で....エリスをどうするつもりですか?」


「そこの少年...今、邪魔をされちゃ困るんだよね。それと、この娘だけど預からせてもらうから」


「はいそうですか。というわけにはいかないよ!エリスを返してもらう!!」

僕は、再び剣を構える。すると地上で戦いを終えたラフィーとグリアさんが戻ってきた。


「おいおい。これはどういう状況だぁ?なんで受付の嬢ちゃんが弟子のエリスを抱えてる?」

グリアさんが首をかしげる。


「イツキー!私たち勝ったよーってこれはどういうこと?」ラフィーもまた首をかしげる。


「あらあら。ラプラス、あなたの傀儡はどうやら負けちゃったみたいね?」


「ッ!は、はい...そのようで」

ラプラスはさらに怯えた表情になった。戦闘中のあの余裕が完全にない。


「戻ったら、お仕置きが必要ね。計画外の事をやったことも含めてね」


「おいおい。勝手に話を進めるんじゃねえよ!ウチの弟子をどうするつもりだ?まさかそのまま抱えて帰るってことはないだろうな?」

グリアさんが二人の会話に割って入る。


「ごめんなさいね。そのまさかよ。この娘は私たちが預からせて貰うから。ただ安心してちょうだい殺しはしないわ」


(今だ!)

グリアさんと話している最中の一瞬を突き、まだ身体強化中だった僕は、受付嬢に近づいた。そして抱えられたエリスを奪い返そうと試みる。

「パキンッ!」

(な、なんだ!?)

何か見えない壁に当たり、エリスを取り返すことができなかった。


「エリスを返しやがれ~!!」グリアさんも受付嬢に手を伸ばしたが、僕と同じように弾かれた。


「ふん!君たちなんかが、お姉さまに触れようなんて100年早いよっ!!」

ラプラスが僕たちに向かって言ってきた。


「ラプラス、黙りなさい」


「うっ!」


「では、皆さん。こんな夜遅くにお集まりいただきありがとうございました~。ご機嫌よう~♪」

ラプラスがお姉様と呼ぶ人物はエリスを抱えたまま、軽く会釈をして、この場から一瞬で消えた。ラプラスと一緒に。


「「エリス!」」

僕とグリアさんが声が空を切った。

----------------------------------

その後のギルドはバタバタしていた。深夜の戦闘での音で気づいた冒険者やギルド職員達が集まってきたのである。ジーンギルド長が操られていたこと。ギルドでの戦闘のことなど色々説明しに周り、気づけば、朝日が昇っていた。ほぼ、丸一日一睡もしていないので体力の限界も近づいていた。

ふと、ラフィーの姿が見えなかったので、付近を見てみると、椅子に腰かけて寝ていた。


(ラフィ~!先に寝ているなんてずるいっ!早く僕も寝たいのにー!)

すやすやと寝ているラフィーの姿を見て、嫉むような表情をした。


「イツキ!少しいいか?今後の事について話がしたいんだが、、、」

僕はグリアさんに呼ばれた。


「ええ。大丈夫です」


「ラフィーちゃんは...お休み中か。一緒に聞いて貰いたかったんだが」


「出来れば、休ませてあげたいのですが...ラフィーも後片付けや修理に色々と手伝って疲れたと思うので。僕から後で伝えますよ」


「そうか、分かった。では、イツキこっちに来てくれ。ジーンギルド長が待っている」

僕は、グリアさんに連れられて、ジーンギルド長がいる仮設のギルド長室に向かった。

仮設だが扉はそこそこ立派だった。

「私だ。グリアだ。入るぞ」

数回ノックした後、ぶっきらぼうな口調で言った。


「どうぞ。入ってください」

扉の向こうから声がした。グリアさんが扉を開けるとズカズカと中へ入って行った。僕は彼女の後を追うように入室する。


「初めましてだね。君がイツキ君だね」


「あ、はい!」緊張感が漂う。


「まずは、お礼が言いたい。この度はどうもありがとう。君たちに大変なご迷惑をかけてしまった」

ジーンギルド長は申し訳なさそうに深々とお辞儀をした。


「顔を上げてくださいっ!ラプラスに操られていたわけで、ジーンギルド長が悪いわけではないですよ!」


「そんな事はない。操られていたとはいえ、実際に君たちを傷つけたのは私だ。ところでラフィー殿はどちらに?彼女にもお礼と謝罪をしたいのですが」


「すみません。ラフィーは今、お休み中です。あの後バタバタして動いたので疲れたみたいで」


「そうでしたか、では目覚めたらまた改めてお礼を言いたいと思います」

ジーンギルド長は思っていた以上に丁寧な対応をしてくれる。さすがこの街のギルド長!


「ジーン、イツキ。すまないが、そろそろ本題に入りたいんだが...」

グリアさんが話を遮ってきた。


「グリア。すまない。でもイツキさんは恩人だからね。しっかりとあいさつをしておきたいのだ」


「分かっている。だが時間がない。エリスのいる場所を早く見つけ出さないと...このままだとエリスの身に危険があるかもしれない」

グリアさんが焦った様子だ。


「だから、こうしてイツキ君にも来てもらっているんじゃないか。グリア。君は少し焦りすぎだ」


「くっ!」


「さて、イツキ君。実は君にもお願いしたいことがあってここに呼んだんだ。さっきの話を聞いているとだいたいの察しがつくだろうけど、エリスちゃん捜索に協力してほしい」

ジーンギルド長はまた、頭を下げた。


「はい。もちろん。そもそもあの時、エリスの事をしっかり見ていなかったですし...完全に気を抜いてました。僕の不注意が招いた結果です。是非協力させてください」


「イツキ君..ありがとう!!」

「イツキ。恩にきるぞ!!」

ジーンギルド長とグリアさんに感謝を言われ、グリアさんは力加減なしにハグをしてきた。


(く、苦しいぃぃ、、、)

「グリア。放してやれ。イツキ君が苦しそうだ」


「あ。わりぃ」


「では、さっそく本だ...」

と、ジーンギルド長が話を切り出そうとした時


「あのーエリスちゃんのいる場所、分かりますよ?」

僕はそっと手を上げつつ、二人に向かって言った。ジーンギルド長とグリアさんは目を丸くして驚いた表情になった。

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