第34話:本当の目的
「バゴンッ!!」
大きな衝撃音が響き、ラフィー達の戦闘が激しくなった。だがさっきの衝撃音は天井の壁に穴が開いた音のようだ。ラフィー達が地上に出ていく。
「あっちの方、戦いが激しくなってきたね~。君たち心配じゃないの?」
「あいにく、あっちには頼もしい相棒がいるからね。心配はしていない」
「私の師匠もいるんです。大丈夫です!」
イツキは気丈に振舞ったが、内心はものすごく不安でいっぱいだ。一応この街に来る前に戦闘の修行を少し教えたが、基礎的な事しか教えていない。後ろにいるエリスも僕の裾をギュっと掴んで小刻みに震えていた。エリスも同じ不安なのだろう。
「へぇ~。熱い友情っていいね~。嫉妬しちゃいそう~」
ラプラスは頬をぷくっと膨らませた。
「ねぇ~。今からでも遅くないからさ。エリスちゃん私と一緒に来ない?正直戦闘ってめんどくさいんだよね。疲れるし。イツキ君だっけ?あなたもそう思わない?」
「僕も戦いは嫌いですよ。でもあなたはこの街で悪さをしようとしているじゃないですか。僕はそこが許せない。そもそも何でエリスを使ってこの街を襲う様なマネをしようとしているんですか?」
「そうです!なんで!!」
僕とエリスは疑問を投げかけた。
「うーん、それは企業秘密っ!って言いたいところだけど、特別に教えてあげる!」
ラプラスは両手をパンッ!と当て、満面の笑みを浮かべてた。
「生み出すためさ!」邪悪な笑顔でそう言った。
「う、生み出す...?何を...?」
「私たちの同胞だよ!人間たちだと仲間って言った方がいいかな?それとも子孫?私たち悪魔はね。人間の"憎しみ"や"嫉妬"といった負の感情から生まれるの」
「負の感情...」
前世の記憶がある僕にはすぐに理解できた。悪魔とはそういった負の感情から生まれるとかオカルト本に書かれていた記憶がある。だがこの世界で生きるエリスは衝撃的だったんだろう。「う、嘘!」と驚いていた。
「だけど、何でエリスを利用するんだ?仮に街を襲うだけなら別にお前たちでもできるだろう?」
チッチィっとラプラスは人差し指を左右に振る
「イツキ君~。それじゃダメなんだよ~。それだと弱い悪魔しか生まれない」
ラプラスは続けて言う。
「強い悪魔を生み出すには、たくさんの負の感情を受けて、心が壊れて壊れて、さらに壊れて、、身も心もボロボロになったところで生まれるんだよ」
「どういうことだ?」
ラプラスは口角をさらに上げ、にまぁと笑った。
「今回はね。祭りの日にエリスちゃんを操って、ゴーレムを使って血の海にする予定だったの。祭りに参加していた老若男女問わず、ぐちゃぐちゃにしてね。でそこで襲われている人たちは"こんなことしている奴は誰だ!?"ってなるでしょ?。そこで犯人はエリスちゃんってネタバラシをするの!するとどうだろうね~。み~んなエリスちゃんに対して"憎しみ"が生まれるの。でも殺戮はやめない。エリスちゃんはね。この街の全員から憎しみを買ってもらうの。そしたらね。心優しいエリスちゃんは壊れて、そこからエリスちゃんの身体を依り代として新しい私たちの同胞が生まれるんだよ!」
ラプラスは衝撃的な事を口にした。
「......」エリスは最早、言葉すら出ない。
「そんなの狂っている!」
イツキは怒りを込めた強い口調で言い放った。
「狂ってる?そんな事を言われるのは心外だな~。私たちは"有効利用"してあげているんだよ。人族って寿命はだいたい80年ぐらいじゃん。まぁエルフ種とかは別だけど。そんな短命の人族は特に何も生み出さない。だから私たちが"使う"の。その方が人族も幸せだと思うの!」
「まるで人族を"モノ扱い"だな」僕は今度は冷静に淡々と言った。怒りがだんだんと込み上げてくる。今、僕は怖い顔をしているだろう。
「イツキさん...」エリスが呟く。
「だからね。そこにいるエリスちゃんを早く渡してほしいな」
ラプラスはまるで迎えるように右腕を前に出した。
「アプラス。言っておくがエリスは絶対に渡さない」
前に剣を構える。
「ふふっ。そう言うと思ったよ。でもエリスちゃんは確実に貰うよ」
「イツキさん...無茶はしないでください。もしもの時は私は....」
「"自殺"なんて馬鹿なこと考えてないよね?」
「ッ!!」エリスはビクッとした。
「変な考えはやめてくれ。自殺なんて誰も望んでいない。エリスは僕が、いや僕たちが守ってみせるから。だから心配しないで待っていてくれ」
僕とラプラスは互いに睨み合い、戦いが始まろうとする。