第21話:ラフィーの決断2
「はぁ、、はぁ、はぁ、、やっと追いついた」
ラフィーはお母さんをおんぶして走ってきたからだろう。すごい息切れを起こしている。ラフィーの母は「よいっしょ」と言いながら娘の背中から降りた。
数秒後、ラフィーは背筋をピンッ!と伸ばして僕を見つめてきた。そして
「イツキさん!ご報告があります!この度、私もイツキさんの旅に・・・ご一緒させていただきます!」
朝一番でしかも大声で僕に報告をしてきた。
「えっ!?」僕は驚いて、目を丸くした。
「一緒に旅を行きます!!」もう一度、大声で言った。
「いや!そこは分かった!、じゃなくて、お母さんの方は大丈夫なの?」僕は心配になって聞き返した。一週間前、「お母さんがいるから一緒に行けない」と言っていたからだ。
「うん、そこもちゃんと話したよ。自分の気持ちに素直になって、お母さんと話し合ったよ」
すると、そばにいたラフィー母のケフィアさんすっと出てきて、ラフィーの後に続いた。
「一週間前、いきなりラフィーが真剣な表情で相談してきてね。「イツキさんと冒険してみたい!」って言われて、私びっくりしちゃった。前々から冒険に興味があったことは知っていたんだけどね」
「えっ?お母さん知ってたの?」
「何年もあなたのお母さんをしているのよ。それくらい簡単に分かったわ」
さすが、お母さん。やっぱり言わなくても感じ取れるんだなと僕は母のすごさに感心した。
「それでもね。私の事を心配してくれててね。ラフィーは優しいから冒険したい気持ちを抑えて私と生活して、中々私の方からも言い出せなかったの」
「お母さん、、、」ラフィーは呟いた。
「でもね。イツキさんと出会って娘も変わってね。私も変わらなくちゃて思ったの。正直、娘が出てくのは寂しいわ。しかも冒険なんて危険が沢山あって、そこで何かあったらって思うと不安でしょうがなかった。行ってほしくないって思ったわ。でもね、娘には後悔ない人生を送ってほしいの。後悔をさせる親って親失格じゃない?」
「うぅぅ、、おかあさん、、」ラフィーはすでに涙腺が崩壊していた。
ラフィー母はそっと右手でラフィーの頭を撫でた。
そして、僕の方を見て、
「イツキさん!娘の事よろしくお願いします。不器用でご迷惑かけることが沢山あると思いますが、根はまじめですので、力になると思います」
「そんな畏まらないでください。というかむしろ僕の方がラフィーさんにお世話になるかもしれないですから、、でも分かりました。僕がラフィーさんの事絶対守ります」
「わ、私の方からも不束者ですがよろしくお願いします!」ラフィーも慌てて後に続いた。
「でも、お母さんの方はお一人で大丈夫なんですか?」僕はラフィー母に聞いた。
「大丈夫よ。確かにこれから家では一人になるかもしれないけど、ご近所さんとも付き合いが長いし、自分の趣味の教室を開いてセカンドライフ?っていうのもやってみようかなって思っていたりしているのよ」と笑顔で言った。
「ラフィーは本当に僕とで本当にいいの?」
「うん!確かに一緒にいた時間短かったけど、私の直感と気持ちが今しかないって言っていたの。それにイツキさんは私に悪い事でもするの?」ラフィーがいきなりじーっと見てきた。
「そ、そんなことするわけないじゃないか」僕は焦った声で返事をした。
「ふふっ。なら大丈夫じゃない」
(これは、もしかしたら、尻に敷かれるパターン?)僕は世の中のお父さんの気持ちが少しわかったような感じがした。
その後、約数分間、僕とラフィーとラフィー母のケフィアさんで他愛のない話をした。
そして、
「じゃ、ラフィー!そろそろ行こう」僕はラフィーに言った。
「うん!」ラフィーが首を大きく縦に降った。
「お母さん!それじゃ言ってくる!元気にしててね!絶対だよ」元気に手を振った。
「ラフィーあなたも元気でね」ラフィー母は笑顔で手を振った。
僕とラフィーは前を向いて歩き始めた。街からどんどん離れていく。振り返ると米粒サイズぐらいになったラフィー母が立っていた。
「お母さん。泣いてなかったなぁ~。グスッ、私、ちょっと涙出てきちゃったよっ」
ラフィーはぽろぽろ涙を流した。
「そうだね。ケフィアさんは強いね。自慢のお母さんじゃん」
「うん!」ラフィーは嬉しそうだった。
でも、僕は見ていた。ラフィー母も泣いていた。笑顔で手を振っていた時に目尻が光っていた。
こうして僕たちの冒険が始まった。