第2話:異世界へGO
神様から修行という言葉が出てきて少し動揺した。
「修行するんですか?すごい能力とか頂いたりとかないんですか?」
てっきりこういう展開の場合、チート級の能力をもらって異世界で無双ができると思っていた。
「何甘いこと言っているんですか?そんなわけないでしょう。しっかりと修行してもらいますよ。
先ほども言った通り、あなたが行く世界は魔物とかいるんです。最低限の戦闘とかできないとすぐ死んでしまいますよ」
神様は当たり前のように当たり前のことを言った。
そしてやさしく微笑みながら「安心してください。しっかりと私が指南しますから。」と答えた。
「でも、ここで10年も修行する意味あるんですか。10年は結構長いですよ?」
先ほどの説明で修行は必要と理解したが、そこまでやる必要があるか疑問に思った。
「実は、、、」神様が途切れそうな声で続けた。
「実はあなたが行く世界は人族と魔族が争いを続けている世界でして、約100年間ずっと続いているんです。第二の人生を謳歌してもらうと言った手前、話に切り出せなくて、、、すみません」
神様が申し訳なさそうにそう言った。
「なるほどね、、」
僕も頷いた。簡単に言ってしまえば、戦地に僕を送るということだ。
誰だって言い辛くはなる。
「なので、10年修行を行って貰うんです」
「10年の理由は?」
「私の元で10年修行すれば、魔王と互角かそれ以上の力を付けられるからです!」
神様は胸にこぶしをあて、自信満々で言った。
僕は、しばらく考えた後
「分かりました。神様っ!修行お願いします!!」
勢いよく神様に向かって答えた。
そうして、神様による10年の修行が始まった。
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「師匠!10年間ありがとうございました!!」
今日が最後の修行の日ということでいつもより大きな声でお礼を言った。
「10年間お疲れ様でした」
師匠はゆっくりしたトーンの声で言葉を返した。
今、思い返してみると修行の日々は本当に辛かった。
最初の頃はあの優しい性格からは考えられないスパルタメニューの修行だった。死んでしまうのではないかと思う修行もあった。だが、こうして過ぎてみると最初の頃が懐かしく感じる。
神様の呼び方も変わった。今では師匠と呼んでいる。
「僕って強くなったんですよね?」
「ええ。強くなってますよ」
その言葉に嘘はない。それにあれだけ修行したのだから。
「とても名残惜しいですが、さっそく異世界に行ってもらいましょう」
師匠はそういった後、「あっ!」と思い出したかのように続けた。
「そういえば、樹君の行く世界の説明をしていませんでしたね。危ない危ない」
「僕が行く世界ですか。そういえば、今まで考えてこなかったな。どういう世界なんです?」
「君に行ってもらう世界は、最初に言った通り人族と魔族が争っている世界。できればだが、救世主とまではいかなくても、争いを止める手助けをしてもらいたい」
「争いを止めるか、、僕にできるかな、、」
「あくまで手助けだから、樹君のできる範囲でかまわないよ」
師匠がそういうと
「あと、重要なことがもう一つ。君が行く世界では【変身】というスキルが全員使える世界なんだ」
「変身ですか?人族も魔族も?」
「そうだ。個人差は個々にあるものの全ての種族が使える。君も例外なく使えるはずだよ」
「僕が変身っ!?」内心すごくドキドキした。変身といえば、やっぱり男子の憧れである。
「僕の変身って何ですか???」勢いよく、師匠に詰め寄った。
「おっ落ち着いて!そればっかりは私にも分からない。樹君が異世界に行って初めて会得するものだからね」
「つまり、行ってからのお楽しみということですね」
「そうなるね」
「なら、早く異世界に行きたいです!早くっ早くっ!」
僕は師匠をせかした。
「分かったから、行けるようにするから」
師匠があたふたしながら、準備を速めた。
「よしっ。こっちは大丈夫。樹君の準備は大丈夫?」
僕は「大丈夫ですっ!」と力強く答えた。すると体がだんだんと薄くなっていった。
「あっちの世界でも頑張るんだよ」と笑顔で師匠は見送った。
そして僕も笑顔で「頑張ります」と答えた。すると直後、目の前が一瞬で暗くなった。
「ドサッ!!!!」「いてっっ」
背中に衝撃が走った。そして目を覚まして見るとそこは、、、森だった。
こうして小林樹の異世界ライフが始まった。