第15話:冒険者生活【その3】
「ゴブリンどもこっちだ!」
「「「ゴブブッ!」」」
僕は大声を出し、ゴブリン達を惹きつけた。ラフィーは少し距離が離れたところで戦闘態勢に入っている。
(よし。これで僕に注意が向けられた。最初は手下の普通のゴブリンを倒していくか)
今、僕は女の子の姿である。この状態だと接近戦より遠距離戦、つまり魔法系統が得意なのである。
そして、両手に魔力を集中して魔法を出した。
「地への地獄」
僕の中でもある程度、高位の魔法を出した。こちらの世界で初めての戦闘なので、気合を入れてみた。
ちなみにこの魔法は、地面に奈落の沼を作り沈ませる魔法である。どこまで沈むかは使用者の僕ですら分からない。少々危険な魔法である。
「「ギャァぁぁぁぁぁぁ」」
ゴブリン達は一斉に悲鳴を上げた。
「グォォォ、、、」
ゴブリンキングも雄たけびを上げた。しかし、さすがゴブリンキングである。この魔法に何とか耐えている。
数分後、ゴブリンキング以外のすべてのゴブリンが沼と化した地面に吸い込まれた。残るはゴブリンキングのみになったが、この魔法にかかったままである。地上には上半身のみしかない。
「ゴブリンキング!悪いけどここで倒させてもらうよ」
僕はもう一つの魔法を繰り出した。
「氷の薔薇園」
この氷魔法は薔薇の枝がまるで生きているかのように相手に向かって伸びてゆき、相手を凍らせる。それだけではなく、枝が伸びる際に無数に枝分れしていく。そして完成すると氷の薔薇園のような辺り一帯が氷の世界となる。
「グォォォォォ!!!」
背中に備えた武器を出して、ゴブリンキングは必死に氷の枝を砕いていく。
「オォォォ、、、、」
やがて、抵抗する勢いは失くなっていき、
「ォォ、、、、」
身体が動かなくなっていき、
「、、、、、、」
そして、ゴブリンキングは凍っていった。
こうして、時間にしてわずか数十分の戦闘は静かに幕を閉じた。
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「ふぅぅ~」
僕は緊張が解けたようなため息を漏らした。
「魔法がちゃんと発動してよかった。もし発動しても効かなかったらどうしようかと思ったよ~」
一番不安に思っていたことを呟いた。そして、あれほどの戦闘をしてもこの落ち着きでいられるのも師匠との修行の成果なのかなとも思った。
自分の戦闘で高ぶった気持ちが落ち着いてきた頃、ラフィーの事を思い出した。戦いに夢中になり、すっかり忘れていた。
「ラフィー!大丈夫!?」
僕は大声を出し、周囲を見渡した。すると「だ、だ、大丈夫だよ~」とラフィーが震えた声で返事をした。最後の氷魔法で辺り一面が氷だらけになっており、両手をクロスさせながら震えていた。
「それより、この氷何とかして~」それは、ラフィーの悲痛な叫びだった。