第1話:僕、神様に合う!
カチィカチィカチィ
時計の音が夜の職場に空しく響く。
俺は小林樹。26歳。体格は小柄であり、身長は165cm。男だが童顔で大学生の時は女性に間違われたこともある。現在は世間一般でいうサラリーマンであり、毎日残業に追われる日々を送っている。
「ふぅぅ、やっと終わったぁぁ~」
今日の仕事がやっと終わった。ふと時計の方を見てみると、時刻は24時を過ぎようとしていた。
「うげぇ、もうこんな時間か、、スーパーまだやってるところあるかなぁ~?」
ほぼ毎日こんな感じである。目をこすりながら家と職場の行き来の毎日。
今日はもう流石に体力の限界なので、そそくさと帰りの身支度を始めた。
「今日が金曜日でよかったな~。帰って新作のゲームができる!!ネットの評価とかすごく高いからやるのがホントに楽しみだ。」
恋人もいないため、土日は基本暇をしている。なので、ゲームをすることが趣味になっている。帰ってすぐ今回でた新作を夜通しでやる予定だ。
体は疲れているが、気分が高揚する。深夜テンションも少しあるのだろう。そのせいか、普段、目にしている横断歩道の信号が赤になっていることに気づかず、横断歩道を渡ろうとしてしまった。
「キィキィィィィィィイイイ」
トラックの激しいブレーキ音が鳴り響く、それと同時に自分の身体から鈍い音がした。タイヤの焦げ臭いにおいがする。一瞬何かと思ったが、なぜか自分の身体が動かない。そこで初めて自分がはねられたことに気づいた。だんだんと意識が遠のく、この日「小林樹」は死んでしまった。享年26歳である。
--------------------------------------------------
「うぅうぅ~~ん」
目を覚ますと、そこにはすごく広い白い空間が広がっていた。先が全く見えないほど広い空間である。
「あれ?どこだろうここ。僕はたしか車にはねられたはずだけど、、、」
必死に自分の最期の記憶を絞り出す。
見知らぬ場所、ここは天国なのかなと思っていたその時、
「ここは天国ではないよ」
いきなり後ろから声がした。一瞬びくっとなったが不思議と恐怖とかは感じなかった。振り返ってみるとそこには、古代ローマの貴族の服と思わせる白い服装で長身の髪の長い男性が立っていた。
「あなたは・・・?」
「驚かせてごめんね。私は地球を管理している者だよ」
とても透き通った声の持ち主だ。
「地球を管理って??もしかして神様???」
「ふふっ。まぁ神様に近い存在かな。私はね魂の管理者。地球で亡くなった人の魂を浄化して新しい命に宿したり、稀に別の世界に送ったりしている存在だよ。ちなみに本当の神様と呼ばれている方は私の上司ですよ。」
しれっとすごいことを聞いたような感じだが、驚きはあまりない。
「そんなあなたがどうして僕の前に?もしかして神様たちの前で公開処刑を・・・」
「そんなひどいことしませんよ。先ほども言ったように私は魂を管理していてね。君には別の世界に行ってもらいたい。」
「えっ!?僕がですか!?」急に裏返った声で反応をしてしまった。
「君は前の世界でかなり徳を積んでいるね。その徳に免じてだよ。是非、第二の人生を謳歌してほしい。」
昔から、爺ちゃんや婆ちゃんに「困った人がいれば絶対助けぇ。その行動は必ず自分に返ってくるだぁ」そう教えられてきたため、死ぬまでの26年間、目の前で困っている人がいれば助けてきたが、褒めてくれる人はいなかった。
「あ、ありがとうございます!」初めて褒められた。嬉しさと同時に涙が零れそうになったが、ぐっとこらえ、再び神様を見た。
「別の世界に行くとはどういうことですか?」
「そのままの意味だよ。君は新しい体で別の世界に行ってもらう予定なんだ。ただ、行ってもらう世界は悪魔や魔族などがいる世界でね。君の言葉でいうと「ファンタジーな世界」というのかな。危険もたくさんある世界なんだ。」
「ファンタジー・・・」その言葉を聞いてロマンがでた。僕はゲーム好きでもある。その言葉に惹かれないわけがなかった。
「でも、僕は戦闘、、戦いをしたことがないですよ。いきなり異世界にいっても戦力になるんですか?」
「それは心配ない!」と神様ははっきりと答えた。
「では何か能力をくれるんですね」転生につきものであるチート能力の期待が高まる。
「ここで10年修行してもらうっ!」
「・・・えっ?」素っ頓狂な声が漏れた。