第1話 二人の英雄
二つの異なる世界。
人間と精霊が共に暮らす、四大大陸国が世界を治める世界。
魔族と神の民が上下に分かれて、それぞれの世界を争いなく治める世界。
しかし、一万年前。二つの異なる世界が秩序を乱して、橋となって繋がってしまった。
一人の人間の王が、そのことを知って魔族の世界を侵略せんと大軍を率いて攻め込む。
魔物の国を治める魔王も、人間の愚行を嘆いて、戦いを挑んだ。
二つの異なる世界は、数千年の間、お互いに攻めては引き、引いては攻め、終わらぬ戦いの日々を嘆いた。
その時、一人の勇者が立ち上がり、神々が魔族との調停をせんがため、勇者に神聖剣を与える。
魔王も一人の人間が凄まじい力を持って、自らの地に乗り込むと知って、精霊の霊力を授かり魔力を強化して、勇者と戦う。
数日間に及ぶ勇者と魔王の戦いは、とても苦しい消耗の果て、勇者の勝利に終わった。
それは、一万年から続いた異なる世界の橋がきっかけで、6千の月日を費やして、ようやく平和となるべく決着がついたのだった。
「けれど、橋となる空間は繋がったまま、さらに4千年も時が経つのでした」
一人の女教師が、子どもたちに終わりのページを見せる。
子ども「魔族は滅んだの?」
女教師はにこりと笑い、
「いいえ、今もあちらの世界で繁栄しているといわれているわ」
そう、この物語は続きがある。なぜ、魔族は姿を消したのか、人間の王たちはどうして、今も繋がっている橋をこちら側で閉ざしたのか。
これは、千年も前の物語。そこから紐解いていかなければいけない、人間の傲慢と魔族の愛憎の深い物語。
千年前。東の大陸ガルセイム。その首都ガーレセン王国。
この王国は、魔族との戦いに三度攻め、魔族の領土を一部奪ったほどの歴戦の王国。
だが、勇者の活躍で魔族に領土を返還。今は勇者と王の伝承が大陸中に広がっている。
「さて、北の帝国バルガンデシアと南の神公国クリスガイアとの貿易、並びに同盟について・・・」
大臣秘書が紙を読み上げる。
長々と議題が続き、ガーレセン王が口を開く。
「一昨年の春、中央大陸にあるモルトルーガ小国で一つの学院が創られた。そこで、余からある提案がある」
謁見の間に集められた多くの大臣、秘書官、神官が目を王に向ける。
モルトルーガ小国、セントラル勇者学院。その門前。
青年「まあ、そーなりまさーねー」
「何、呆れた顔してんのよ。ほら、レイト、行くわよ」
レイトと呼ばれるその青年の尻を叩いて、幼なじみの少女がレイトを急かす。
そう、このレイトと呼ばれる青年が後の新たな勇者である。