幕間 (リアside)
今回の話はいつもより短めにしております。次回話から第二章が開始します。そのため少々お時間いただきますので、ご了承ください。
吸血鬼事件から1ヶ月。以前騒がれていた事件の犯人は吸血鬼だということが冒険者ギルドを通じて判明し、町中に不安が伝播した。その後新聞で討伐された事を報道され、人々は落ち着きを取り戻し今はいつも通りの日常を過ごしている。私、リアも例外なく何時もの仕事を終わらせ、孤児院に帰る。
「ただいまー」
「おかえりリア姉。早くご飯食おうぜ、お腹空いたよ」
「今から作るから、アルはみんなと一緒に手を洗って来て」
「分かった」
アルはみんなを呼びにバタバタと走っていく。今日は院長も帰ってきてるはずだから帰ってきた事を伝えに院長部屋へ行く。すると中から話し声が聞こえてきたので、後にしようとすると気になる会話が聞こえた。
「…それで、あの子は本当に貴女がやったの?」
「いんや、あやつは生きてるはずじゃよ。吸血鬼はしぶといからの。致命傷ではあったが何とか生きておるじゃろ」
院長が誰かと話しているけど、もう1人の声は聞き取りにくい。ドアに聞き耳を立てながら先程よりも鮮明に聞こえてくる。
「貴女も甘いわね。昔吸血鬼には苦渋を舐められたってのによく逃がす気になった事。その気になればすぐ殺せる癖に」
「そんな事をすればお主に殺されてしまうわい。わしはまだ生きてたいのでな、危ない橋をわざわざ渡る趣味はないのじゃ」
「よく分かってるじゃない。あの子の事を考えたら今すぐにでも貴女を殴ってやりたいけど、あなたの立場じゃしょうがないから特別に許してあげるわ」
「おお怖い怖い。とても聖女の言葉とは思えん過激な発言じゃのう」
「元聖女よ。今回の件ではあの子は被害者よ。ここにいた時から知ってるからとても心が痛むわ。だからなるべく助けになりたいの。貴女も手伝ってくれるわよね?」
「分かっとる。わしもあやつは不憫に思っとる。一冒険者を贔屓してしまうと他のもんから苦情が出てしまうから多くの事は出来ないが、なるべくこちらから便宜を図っておく。じゃから安心せい」
「そうして貰えると助かるわ」
「それじゃわしはこれで失礼するでの。またよろしく頼むわい」
話が終わったのか部屋から出ようとする。聞き耳が立ててたのがバレないように、私は逃げるようにして調理場へ戻る。今の話を聞いて気になる所がある。あの子とは誰なのか、誰と話していたのか。今度院長に聞くとしよう。
だが先程の会話が気になって身が入らず、その日の夕食はちょっと失敗した。