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戦闘のち旅立ち

「これでよし」


 荷物をまとめ部屋から出る。いつかはこの街を出ようとは思ってたけどまさかこんな形になるとは夢にも思わなかった。ここでの冒険者稼業は決していいものではなかった。Eランクだったから仕方ない部分はあったし嫌な事は沢山あったが、いざ離れるとなると寂しいものがある。孤児院の事も心配だが巻き込む訳には行かない。心惜しいが早く出よう。いつやられてもおかしくは無い。


 階段を降りて下の食堂に出ると料理をしてる音が聞こえる。ここの飯は美味しかったのでこの宿を選んだもんだ。最後に食べれないのが残念だ。


「すいません。チェックアウトをお願いします」


「はいよー。あれ、あんたいつの間にうちに泊まってたんだい?」


「大分前に泊まらせていただきました」


「そうだったかね?まあ冒険者は日帰りじゃない事も多いからね。覚えてなくてごめんよ」


 記憶消去使ったからそうだろう。俺が唯一覚えてる魔法で強力なのだが、いかんせん扱いが難しく、今の俺では関わった人全員に発動してしまう。だから使う機会がなかったのだが、今回は都合が良かった。


「いえいえ、大体の冒険者はそんなもんですからね。大丈夫ですよ」


「すまないね。お代は頂いてるからそのまま出てってもらっていいよ」


「分かりました。それではありがとうございました」


「またのご利用待ってるよ」


 挨拶も済ませ宿を出てく。すっかり日が昇って眩しい。そういえば吸血鬼は日に弱いとは言うが俺には効かないようだ。日中も行動できるのは吸血鬼的にはありがたいのであの吸血鬼に感謝する。こうなったのも吸血鬼のせいなので許しはしないが。


 東門から出ようと向かうと人が見える。吸血鬼になった分視力が良くなったのか遠くでも物や人がよく見える。この街の冒険者ギルド長のアウロラだ。元Sランクの冒険者でエルフで魔法の扱いが並ではない。噂によると500年は生きてるらしい。もしバレたら戦闘は避けられない。気づかれないように堂々と、あとさん歩、二歩、1歩。


「おや?こんな朝早くから仕事かの?精が出るのぅ」


 あと一歩という所で話しかけられた。なんて間の悪さだ。己の不幸を呪いながらとりあえず誤魔化す。


「ギルド長じゃないですか。これから依頼でノーズボアを倒しに行きます」


「そうかそうかそれは邪魔したのう。頑張ってくるんじゃぞ」


「はい頑張ってきます」


 本当は魔物自体倒したことは無いのだがギルド長といえど低ランクの冒険者の顔なんざいちいち覚えてないだろう。ボロが出る前にさっさと行くか。


「ちょいと待ってくれんかの。わしはこれでも長生きしてての。その分知識や経験が豊富なのじゃ」


 そんなことは知ってる。エルフは長命種だから見た目では判断しちゃいけないのはギルド長本人も分かるはずだ。何故今その話しを始めたんだ?


「そんなワシから言わせてもらうのじゃがな、主の体から薄らとだが血の匂いがするのじゃが何でじゃろうな。のう吸血鬼よ」


 全身に悪寒が走る俺はその場から離れる。爆音と共に先程まで俺がいた場所に爆発が起きた跡が残った。


「今のは捉えたと思ったんだがのう。いやはや歳は取りたくないもんじゃ」


 第六位火魔法エクスプロシオンを無詠唱で放つとかSランクは伊達じゃない、今の食らったら塵一つ残らず死んでた。それにしてもよりによってアウロラに吸血鬼だって事が知られたのはまずい。Sランク冒険者は例外なく化け物だ、山一つ消し飛ばすことをやってのけるやつばかり。そんな奴と戦わされるってんだから酷いもんだ。


 真正面から戦っても死ぬだけだ。どうやって攻撃を掻い潜って逃げるのか考えるので精一杯だ。


「主が報告に挙げられてた吸血鬼かは存じぬが、生かしてはおけぬのでな。お主だってそう思うじゃろEランク冒険者のヴィンよ」


 アウロラが俺を知っていた事に驚き、隙ができてしまう。それを見逃すアウロラではなく、すかさず次の魔法を放ち俺は受けてしまう。


「第四位風魔法インビジショット。心臓に当てたからろくに動けまい。これで十分だとは思うが、念には念を入れて脳も壊すととしよう。昔対峙した時に脳を破壊しなかったおかげで逃がしたのがおってな、以来わしは吸血鬼は心臓と脳を破壊するようにしておる。残念じゃったな」


 非常にまずい、早く何とかしないと。考えろ考えろ考えろ考え-----


「終わったの。それじゃギルド長に戻るとしようかの。もう疲れたし部屋で寝ててもメルルにはバレんじゃろ」


 コッコッコッと歩く音がだんだん遠くなる。やがて周囲が静かになり、そこにはひとつの死体と無数に飛び散った血。するとちが死体に群がり全て集まると再び死体が動き出す。


「土壇場だったがなんとか成功したな」


 吸血鬼は自分の血を操って戦うことが出来るのを思い出し、回りに飛んだ俺の血に意識を移せないかと思い、意識だけを血に移し周りの安全を確認してから自分の体に戻る。一か八かの賭けだったが上手くいってよかった。また誰かが来ないうちにさっさとこの街から出るか。


 無事とはいかなかったが、生きてる事に安堵し次の目的地のシーブルへと向かうのであった。

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