冒険者ギルド
「あったあった、魔素草。」
カンカンとした日照りが身を焼き付ける中、俺はFランク依頼である魔素草の採取をしていた。
見つけるのは少し難しいがコツを掴めば駆け出しでも簡単にこなせる依頼で、意外と高値で買い取りして貰えるので冒険者になったばかりの奴らには嬉しい依頼である。先日Eランクに上がったが貧乏なのは変わらないので、草刈りの如く魔素草を狩り取っていく。
「日が暮れてきたし、そろそろ街へ戻るか」
魔素草の入ったカゴを落とさないように背負いながら、依頼達成の報告と換金をしてもらうため、冒険者ギルドへと向かう。最近はこの依頼だけで食うには困らないんじゃないかと思いつつ、目的地に着いた俺は受付嬢の所へ行く。
「Eランク冒険者のヴィンです。依頼の報告と換金お願いします」
「では、確認させていただきますので、少々お待ちください」
受付嬢にそう言われ、ギルド内で待つ。すると視界に見知った奴が入る。あちらも気づいたのかニヤニヤと、嫌な笑顔を向けながらこちらへと来る。
「よぉヴィン。今帰ってきた所か?お前の事だから何時もの小銭稼ぎだろ?魔物と戦うこと無くちまちまと薬草ばかり採取してよく飽きないな。そんなんでよく冒険者を名乗れるぜ」
「ははは!ビルの言う通りだぜヴィンちゃんよ!冒険者やめたほうがいいんじゃねぇか?その方がいいと思うぜ」
ビルとその仲間の嫌味を皮切りにこちらを見てクスクスと周りの連中が笑う。悔しいがその通りである。確かに俺は魔物を倒す事は得意ではなく、逃げられることが多々あった。だから中々依頼を達成出来ず、こうした採取依頼ばかりをすることになった。
「お待たせしましたヴィンさん。依頼の報酬と追加で採取していただいた魔素草の換金として、合わせて銀貨4枚と銅貨50枚です。それでは失礼します」
丁度査定が終わったらしく、報酬の金を渡されそそくさと自分の持ち場へと戻る。本来なら止めて欲しいが、ビル達は俺より高いDランク冒険者。ましてや一般人では何をされるか分からないので仕方がない。
「ヴィンにしては稼ぐじゃねぇか。俺たちこれから酒場に行く所だったんだよ。だからその金貸してくれねぇかな?」
そう言って今まで返したことなんて1度もないのによくもまあ言えるもんだ。周りの奴らも止める気は無いのか何も言わない。みんな腐ってやがる。口に出せばどうなるかは分かってるので心の中でそう悪態をつく。
「あ?なんだその目は?お前よく北区の孤児院行ってるよな?生意気な態度とってたらどうなるかは分かるよな?」
「…ほらよ」
「最初からそうすればいいんだよ。手間取らせんじゃねぇよ」
手荒く金を取ると仲間達と酒場へ向かっていく。周りも興味無いといわんばかりに視線を外す。俺もこんな所にはもう居たくないので冒険者ギルドから出る。
「くそっ、いつもいつも金取りやがって。いつかあいつらよりも強くなってやる」
苛立ちながら街を歩いていく。今すぐにでも出ていきたいが、いつも金を取られるせいで資金も貯まらず、中々他の町へ行けない。
それにここには離れられない理由が他にもある。この街の孤児院にはお世話になってるので少しでも借りを返したい。いつ返せるのかは分からないが。
「おーいヴィン」
後ろから呼ぶ声が聴こえたので振り向くと孤児院の管理をしている見習いシスターのリアが呼んでいた。
「やあリア、奇遇だな。夕食の買い出しか?」
「うん。買い物を済ませたし、帰ろうとしたらヴィンを見かけたからつい呼んじゃった。これから帰る所だった?」
「依頼も終わった所だし、帰ろうかと思ったんだが、良かったら孤児院まで荷物持っていくよ。」
「ありがとう。それだったら夕飯食べていきなよ。ご飯まだ食べてないでしょ?」
「嬉しいけどそれは悪いよ。そんなに余裕ないだろ?」
「いいの!ヴィン最近忙しいのか分からないけど孤児院来てないでしょ?だからか子供達も会いたがってるし、それに私もヴィンと…」
「最後なんて言ったんだ?」
「なんでもない!とにかく食べてってよ!いい!?」
「あ、あぁ分かった。そんなに言うならご相伴しようかな」
これ以上はリアが拗ねてしまいそうなので、大人しくお世話になることにしながら孤児院に向かう事にした。