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父様……、ごめんなさい……

 何も見たくなかったわたしは、瞼を閉じたまま手を引かれて連れられるがままに移動していた。

 

 結構な距離を移動したと思うけど、周辺はとてもシンと静まり返っていた。

 目を開ける勇気もなく、ただただ不安で仕方がなかった。

 

 そうしていると、誰かがわたしの側にやって来たのが分かった。

 

 身を固くしていると、声を掛けられた。

 

「ソフィエラ……、とても綺麗だよ……。こんな日が来るだなんて……、父さんは……父さんはっ……」


 声の主は父様だった。

 父様の声は、震えていた。

 もしかして泣いているのかしら?

 

 そうよね……、王太子の不興を買った娘がこれから惨めに晒されるという場面に立ち会わされるだなんて、泣きたくもなるわよね。

 でも、わたしだって泣きたいわ。

 ここまでされるようなことした覚えがないものだも。

 

 わたしは隣で泣いている父様に、下を向いたまま瞼を閉じた状態だったけど、辛うじて小さな声で言葉を掛けていた。

 

「父様……、ごめんなさい……。わ、わたし……」

 

 言葉が続かなかった。これ以上言ったら、きっと泣いてしまうから。

 惨めな姿をこれ以上晒したくないという思いから、ぐっと泣くのを堪えたわ。

 

 そんなわたしのことを心配してか、父様は優しく言ってくれたわ。

 

「ん?どうして、ソフィエラが謝るんだ?悪いのは父さんだ。済まないな……、こんな事になってしまって。お前に大変な思いをさせてしまって……。一週間、辛かっただろう?父さんも反対したんだよ?でも、王太子殿下の強い希望で、断れなかったんだ。でも、父さん少しだけ頑張って、王太子殿下に仕返ししてやったぞ?さぁ、これから大変だとは思うけど胸を張って!!殿下を驚かせてやろう!!」


 そう言って、父様に手を引かれたわたしは、覚悟を決めた。

 父様が扉を開ける気配がした。そして、扉の先には沢山の人の気配があった。

 

 怖い、怖いよ……。

 

 でも、どんなに嘲笑われても、顎を引いて毅然とした態度でこの残酷な運命を乗り越えると……、あれ?なんで?? 

 

 覚悟を決めて目を開けて、目の前に広がる光景を見たわたしは意味が分からなかった。

 

 わたしの頭の中は、沢山のどうしてで埋め尽くされていた。

 

 そして、わたしの視線の先には、真っ白な衣装に身を包んだ誰かが立っているのが見えたの。

 

 その光景は、丸でわたしの結婚式のようだった。

 

 ベールで目の前が薄っすらとしか見えないわたしは訳も分からずに、父様に手を引かれるまま広間を進む。

 白い衣装の誰かの前に着くと、父様は涙声で言った。

 

「どうか、娘を……、末永く幸せにしてやってください」


 まさかの展開に、体から血の気が引いた。

 カウレス様の結婚式と同じ日に、誰とも知らない相手と結婚させられることになるなんて……。

 

 でも、カウレス様がわたしにと選んでくれた結婚相手だ。

 受け入れよう……。


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