表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/10

ここまでされるくらいカウレス様に嫌われていただなんて……

 それからというもの、分刻みのスケジュールを全て熟すために必死だった。

 だから、その内容のおかしさに疑問を持つことも出来なかった。

 

 謎の全身エステに、ネイルケアから始まり、散髪と髪の手入れ。それが終わったら、また全身エステで体をもみくちゃにされて、疲れていつの間にかその日は眠っていた。

 次の日も、そのまた次の日も。

 全身をオイルでマッサージされたり、お風呂に入って体を磨かれたりを毎日毎日繰り返す日々だった。

 お城の侍女達に、訳も分からずに全身を磨かれて、毎日肉体的にも精神的にもクタクタだった。

 

 だけど、この苦痛も今日で終わりだと思うとホッとした。

 それと同時に、この一週間まったく顔を合わせなかったカウレス様のことを考えるとモヤモヤが爆発してしまいそうだった。

 

 わたしにこんな苦痛を与えておいて、今頃カウレス様は、想い人にあの美しいドレスを贈ってイチャラブしていると考えると、モヤモヤがイライラに変わっていくのが分かったわ。

 

 全身エステは確かに気持ちよかったし、お肌がツルツルになっていて嬉しくもあったわ。

 髪だって、嘗てないくらいにつやつやのサラサラで……。

 でも、こんなに身綺麗にしたところで、わたしには何もないと思い知らされる。

 綺麗になった姿を見てもらいたい人は、別のご令嬢を好きなんだもの。

 

 こんな無意味なことをさせるカウレス様はなんて残酷なお方なのだろう。

 

 いつもの意地悪にしても、酷すぎます。

 もう、次にあった時は絶対に文句を言ってやります!!

 

 

 こうして、わたしの辛く苦しい一週間が終わった。

 

 だけど、わたしは次の日、目を覚ました時に、どこか遠くの誰も知らない場所に逃げたいと思うことになった。

 

 そう、朝わたしを起こしに来た侍女が言った言葉に、わたしは涙が零れていた。

 

「今日はとても良い日になりそうですね。王太子殿下との結婚式を祝っているようですね」


 侍女は、確かに言ったわ。カウレス様の結婚式と。

 

 そしてわたしは、今までの一週間が何を意味するのか完全に理解して死にたくなった。

 

 これは、カウレス様からの最大級の嫌がらせだと。

 

 寄りにもよって、好きな相手の結婚式に参列させられる上に、場違いにも自身を磨く元婚約者……。

 

 わたし、ここまでされるくらいカウレス様に嫌われていただなんて……。もう、生きる気力もわかないわ。

 

 わたしは、余りにも残酷な仕打ちをするカウレス様の所業に項垂れるしかなかった。

 だけど、優秀な侍女はそんなわたしの支度をテキパキと進めていた。

 されるがままに、洗顔、歯磨き、入浴を終えていた。

 そして、髪の手入れが終わったら、綺麗に髪を結い上げられていたけど、何も考えられずにぼーっと、されるがままにしていた。

 

 いつも以上に気合の入ったメイクを施されている間も、窓の外の木々を見て心をただ無にして何も考えないようにしていた。

 

 いつの間にか、侍女数人でわたしにドレスを着せていたけど目を硬く瞑って何も見ないようにしていた。

 

 全てが終わったようで、侍女がわたしに言ったわ。

 

「とてもお綺麗ですよ。それでは、会場に向かいましょう」


 とうとうこの時が来てしまったわ。

 

 元婚約者が着飾って、場違いにもカウレス様の結婚式に参列するという、滑稽な姿を晒す時が。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ