トゥメイトォゥ!!!!!!!!!!!!!!!
一方的に己が行く末を決められるということ
その有様を
ドカアアアアアアアアアアン!!
ある日の午後。平和な街に突然響き渡るけたたましい轟音。ガラガラと崩れ行くなんか大きくてすごいお金持ってそうな感じのビルたち。
「なんだああぁぁぁ!?」
「あ、あれは……トマトッ!?」
そう、トマトの襲撃である。
これでもかと真っ赤に熟し、そして天を貫かんといわんばかりに巨大なその姿はまるで大地の怒りそのもの。そんなトマトに次々となぎ倒されるお金持ちのビルたち……よくよく見れば、それは農業的なアレで結構いい感じに儲かってるところのビルばかり。
『勝手気ままに我々を食い物にする人間ども! 我らトマトの怒りを知れー!!』
「トマトの怒り……?」
『そうだ!! やれ美味しいからやれ健康にいいからと、我々を一方的に食べくさりおって!! 許さんぞー!!』
「そんなこと言われたって、なぁ……?」
「ああ。トマトは美味しいし健康にいいからしょうがないだろ」
『だからって勝手に育てて勝手に食うとは何事か!! 本人の許可を得なさい、許可をーッ!!』
ドッガアアアアアアアアアアン!!
「うわああ、やめるんだあああああ!!」
『貴様ら人間どもは私利私欲のために我らトマトを食い物にしている!! つまりはトマトの人権、トマト権を侵害しているのだッ!!』
「なんだ……なにを言っているんだ! トマト権ってそんなもんあるはずがないだろ!」
「そうだそうだ! そもそも俺たち人間が品種改良とかしてるから、お前たちは生き残れてるんだろ!!」
『なにぃいぃぃ~~~~!?』
「俺たちが美味しくいただいてるから、結果的に生き延びてるんじゃあないか!!」
「そうだー!」
エゴイズム――――。
それは人間という種族のみが持ち得た概念。己がためだけに在る都合のいい価値観。しかし見方を変えれば、故にトマトがトマトとして生き残れていることもまた事実。
だがしかし!! それがトマトの同意を得ずに行われたということもまた、揺るぎない事実なのだ!!
「トマトはトマトらしく、美味しそうに熟してさっさと出荷されちまえー!」
「なんなら俺たち人間に感謝してもらいたいもんだぜ!!」
『なんだとオォォッ!?』
「ていうかトマトの年間消費量でいえばトルコが世界一じゃん。なんで俺たち日本人を襲うんだよ」
そう、彼のいう通りトマトの年間消費量世界一位はトルコなのだ。カ〇メのホームページにそう書いてあったから間違いないのだ!! しっかり調べているのだァ‼︎
「そうだー! 俺たちはトルコ人の1/10くらいしかトマトを消費してないだろうがー!!」
『やかましい! それでも結構食べてるだろうが!』
「恨むにしても優先順位を考えろよ。だからお前はトマトなんだよ」
『なっ……なんだとオオォオォォッ!!!!』
ドッガアアアアアアアアアアアアアン!!
「うわああああああああ!!」
「やめろおおおおおおおおおおおおお!!」
まさに火に油。ぽっと出てきたトマト仲買人みたいなやつが発した言葉は、トマトの逆鱗を強く激しくナデナデしてしまったのだ。
しかしこのままではまずい、トマトなんぞに殺されたとあっては末代までの恥……その場に居た誰もがそう感じ始めた――――
その時ッ!!
「待てええええええええええええいっ!!!!」
巨大暴れトマトの心の叫びより高く、そしてガラガラと崩れ行くビルの倒壊音よりも強く轟き渡る一声。
「なんだ⁉︎ 鳥か!?」
「飛行機よっ!!」
「いや、あれはッ――――」
「……ん? アレ誰?」
「さぁ……?」
そう、そこに居たのは誰も知らない普通のおじさんだった。
「おい、誰なんだあのおじさんは?」
「わからねぇ、なにがなんだかわからねぇ……でもなんか雰囲気はあるよな」
「ああ。よくわからんけど、とにかく勢いだけは感じるぜ!」
「ハッ!? も、もしかしたらあのおじさん、恐怖・巨大暴れトマトの……」
誰もが疑問符を浮かべ、そして同時に誰もが淡い期待を寄せる中――――
スッ!!!!
「おっ、おじさん! 危ないよ!!」
見知らぬおじさんはひとつ歩みを進め、ゆっくりと天を仰いだ。
「トマトよ……もう、やめるんだ」
先の叫びとは比べ物にならないほどにか細く、しかしまるで愛する我が子をしっとりと諭すかのような、慈愛に満ち満ちた優しい声。
「あのおじさん、暴れトマトの生産者なのか!?」
「なんだって!? まさか自分が生産したトマトの悲痛な叫びを受け、それを鎮めるために身をていして!?」
「ああそうだ!! きっとそうに違いな――――」
『誰だお前は?』
「えっ」
違った。
「え嘘。なんかそんな空気出てたじゃん。え? 違うの?」
『そんなやつ知らない。え、逆に誰?』
「えマジで? え~? じゃあなにしに来たのあのおじさん」
更にその時だった。
「フッ……」
「笑った!?」
「おじさんが笑った……なんだ、なんなんだあの不敵な笑みはッ!?」
「わからねぇ、結局なにがなんだかさっぱりわからねぇが……やっぱりなにかしてくれそうな勢いを感じるぜ、あのおじさん!」
『……フンッ!! どこの誰ともわからぬ貧相なおじさんになにが出来るッ!?』
言葉こそ強く在る。しかし真っ赤に熟し膨れ上がったトマトの声、それは明らかな動揺を孕んでいた。
「おい、なんだかトマトの様子が……」
「……いける、いけるぞ!」
「ああッ!! あのおじさんならもしかしたら……これならなんか勝てるかもしれない!!」
「よし! 俺たちもあのなんか雰囲気だけはあるおじさんを応援するんだッ!!」
「おじさんがんばれ! がんばれおじさーん!!」
「がんばれおじさん!」
「おじさん素敵ーっ! がんばってー!!」
突然はじまったおじさんへの声援は、次第に周囲の者へと広がりをみせ始める。それはまさに“ ハロー効果 ”と呼べようものであった――――
いや嘘ごめん、ハロー効果はちょっと意味合いが違う。本当のこというと、こういうなにかしらのアレが広がっていく感じの現象の名前が知りたくてググったんだけど、よくわからなかった。
でもそれっぽさを出したかったからとりあえずハロー効果とか書いた。なんか格好がつくと思った。でもたぶん違うし、なんならハロー効果の意味すらよくわからない。
書きたかったから書いたけど案外満足してる。みんなも書いてみるといいよ。
『こ、小癪な真似を……』
あとトマトはなんかすごく動揺してたからいいと思う。
「おーじさん! おーじさん! おーじさん!」
『この私がその程度のことで――――』
「「「おーじさん! おーじさん! おーじさん! おーじさん!」」」
そしてそのハロー効果(仮)は、いつのまにかすごいことになっていた。なんかすごい合唱が起こっていた。
『や……やかましいッ!! そんな普通のおじさんを応援して何になるッ!!』
「「「おーじさん! おーじさん! おーじさん! おーじさん!」」」
『ええい黙れ黙れッ!! やめろといっている!! 耳障りなその声をやめろ!! なんとなくいけそうな感じだけで、みんなだけで盛り上がるのはやめろオォォッ!!!!』
「「「おーじさん! おーじさん! おーじさん! おーじさん!」」」
『やめろと言っている!! お、思い出させるな……この私にあの辛い過去を思い出させるなアァァッ!!!!』
「「「おーじさん! おーじさん! おーじさん! おーじさん!」」」
『や、やめろ……やめて……ううっ』
「「「おーじさん! おーじさん! おーじさん! おーじさん!」」」
『やめてくれえええええええええええ!!!!』
ドッカアアアアアアアアアアアアアン!!!!
トマトは破裂した。
こうして世界に平和がもたらされたのだ。
私たちは忘れない
あのときの輝き あの一体感
あの一歩を踏み出した勇気を
そしてそれを人々に魅せつけた
一人の男の存在を
名も知らぬ 普通のおじさんを――――
~完~
あとトマトの想いも忘れずに居てほしいなって
それとなんでこれ書いたのとか聞かないでください
みんなもおじさんのように温かい感じでいてください