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最強のエンターテイメント  作者: sky-high
Roots Of Wrestling 最強
7/51

プロレスラーは強いんだっ!

第2ラウンドのゴングが鳴った。

向こうはどうにかしてオレを寝技に持ち込みたい作戦だろう。

さっきはゴングに救われたが、あのままの状態だったら間違いなくチョークスリーパーでタップしたか、締め落とされてたところだ。


だが、向こうもオレのローキックを嫌がっているはずだ。


オレは1ラウンドと同じガードを固め、打撃で勝負する。


リングの中央で互いの距離が縮まり、オレはジャブを放つ。

だが相手は長い足を繰り出し、前蹴りでオレをストップさせた。


オレは足を使い、相手の周囲を回るようにフットワークでペースを掴もうとした。


どうやって攻めようか…

迂闊に飛び込んできても、キャッチされ、テイクダウンを奪われかねない。


相手もパンチやキックを繰り出すが、フットワークを使って的を絞らせないようにした。


オレは右のストレートを放つと同時に、左のローキックを相手の左膝の内側にヒットさせた。


効いてないとばかりに余裕のポーズを見せているが、ハッタリだ。


初回から何発もローキックを膝の外内にヒットしている、手応えもあった、効いてないワケが無い。


オレはヒット&アウェイの攻撃で、ローキックをヒットさせて下がり、またローキックを当てて距離をとる。


この攻撃が効いたのか、徐々にローキックを嫌がる仕草をしている。


ここはチャンスか?しかしセコンドからの指示は何もない。


相手は何がなんでもグランドに引きずり込みたい、パンチを出す腕やローキックを出す足をキャッチしようと必死だ。


ホントならばここで寝技に持ち込み、パウンドや関節技を極めたい。

だが、それは相手の思うツボだ、冷静にそして執拗に相手の足を狙う。


そして一瞬の隙をついて右のローキックを相手の左膝の外側にクリーンヒットさせた。


しかしガクッとなりながらも、オレにしがみつくような体勢で寝技に引きずり込まれた!


ヤバい、危険だ!

オレは瞬時に立ち上がり、寝技から逃れた。

だが相手は寝てる状態でオレにかかって来い!とばかりにポーズをとる。


クソッ、寝技に持ち込みたいが、勝たなきゃならない…


オレはスタンドの状態、相手はグランドの状態が続く。


オレはグランドの状態の相手にローキックを出す。

だが、相手は一向に立ち上がる気配が無い。


もはやグランドに持ち込むしかないのか…


拍子木の音がカチカチっと鳴った。


ラスト10秒、オレは相手の足を掴み、ズルズルと引っ張り、アキレス腱固めを極めにいったが、ゴングが鳴った。


ワーッという大歓声の中、オレはコーナーに戻った。


「アキレス腱固めなんて通用すると思ってるのか!お前はスタンドで勝負しろ!」


セコンド陣は立って闘え、そればかりだ。


オレは冷静だったが、出来れば寝技で一本を獲りたい。それにダメージはほとんど無い。


柔術の前ではグレコローマンスタイルのレスリングが通用しないのか?そんなはずは無い、レスリングスタイルでも十分に通用するはずだ。


「いいか、次がラストだ!とにかくヤツの足を破壊しろ!」


どうする?セコンドの言う通りに従うか、それとも無視してグランドに持ち込むか…


向こうのコーナーではセコンドが足をマッサージしている。

やっぱりオレのローキックは効いてるんだ。


となると中途半端な攻撃で終わらせるより、徹底的に足を狙うしかない!


「いいか、このままローキックで攻めろ。判定になってもお前の勝ちだ。下手な考えで寝技を狙うな!」


「相手の足破壊して、グランドに持ち込んでもダメなんすか?」


オレはセコンドに聞いてみた。


「…チャンスがあればな。だがローキックで攻めろ!お前のローキックはかなり効いてる!あの足じゃ立つのが精一杯だ。そこから先はお前の好きなように勝負しろ、いいな?」


セコンドアウトのアナウンスでセコンド陣はリングを降りた。


ファイナルラウンドだ、とにかく攻め続けるしかない。

ゴングが鳴った。


ウワーッという歓声の中で、神宮寺コールが巻き起こった。


オレはプロレスラーだ、プロレスラーは強くなければならないんだ!


ゴングと同時にダッシュして、ローキックを打ち込む。


相手も必死になって打撃で勝負にきた。

このままじゃ敗けると思ったのだろう、ラッシュをかけてきた。


オレは距離を保ち、ローキックと顔面へのパンチ、時折ボディにフックを当てながら攻撃した。


物凄い大歓声だ、こんな中で闘えるなんて今まであっただろうか…


【神宮寺!】【神宮寺!】


神宮寺コールで沸き上がるこのアリーナでの主役はオレだ!


そのコールに応えるようにローキックを連発した。最後のラウンド、悔いの無いようにとにかくローキックを中心に攻め続けた。


しかしこの柔術ヤローもそう簡単には倒れない。

伊達に総合の試合で全勝してるワケじゃないって事か。


もう、とっくにヤツの足はイカれている、なのに中々倒れない。


スゲーぜ、コイツ。だがオレもラッシュを緩めるワケにはいかない!


そして顔面にも何発かパンチをヒットさせた。


オレも相手の長いリーチから放たれるパンチを食らった。だが足の踏ん張りが利かないせいか、手打ちになっている。


倒れろ、早く倒れろ!倒れてオレのKO勝ちになるんだ!


その一心だけでローキックの回転を速く、そして強烈に叩き込んだ。


しかし相手もしぶとい、足を攻められ尚も打撃で対応する。


もうオレの頭の中は寝技だの立ち技だのそんな事はどうでもいい、とにかく目の前に立ちはだかるタトゥーの柔術ヤローをぶっ倒すのみ!


セコンドが何かを言ってるが、この大歓声の中で聞き取りにくい。


何を言ってるのか知らねえが、オレはただひたすらローキックを叩き込み、パンチをヒットさせた。


【ストップだ!】


「…っ!えっ?」


攻撃の最中にレフェリーが割って入った…

何だ、一体?


そして今まで以上に物凄い大歓声が沸き起こった…


そしてレフェリーはオレの右手を高々と上げた…


オレはキョトンとして事の意味が解らなかった。

そしてセコンド陣がリングに入り、オレを抱きかかえ、中にはバンザイをしている。


向こうのセコンドがタオルを投げた…


…っ!という事はオレの勝ちだ!


「うぉ~っ!!」


コーナーに上り、高々に吠え、両手を上げた。


場内は神宮寺コールで最高潮に盛り上がった…


【神宮寺!神宮寺!神宮寺!】


やった、勝ったぞ!オレはプロレスラーだ!プロレスラーは強いんだぞっ!


オレは喜びを爆発させ、身体中のアドレナリンが隅から隅まで駆け巡っているかのようだった。


【3ラウンド3分53秒、TKOで神宮寺直人選手の勝利です!】


リングアナウンサーのコールで改めて勝ち名乗りを上げた!


タオルを投げた向こうのセコンドは、相手の両足が紫に変色し、かなりのダメージがあり、これ以上ローキックを食らったらマズイという判断で試合を止めた。


反対側のコーナーでは、セコンドに肩を借りて立っているのがやっとの状態だ。



気がつけばオレも最終ラウンドに何発かパンチをもらい、頭が少しクラクラしていた。

もしそのパンチがローキックでダメージを受けてない状態だったら、オレは1発でKO敗けを喫しただろう。


真剣勝負の凄さ、そして怖さを思い知らされた。


オレはその真剣勝負の凄さを与えてくれた相手のコーナーに行き、健闘を称えた。


試合が終わればノーサイドだ。

そしてあれだけローキックを食らってダウンしなかった柔術家は凄いし、寝技の恐ろしさを身をもって教えられた。


そして互いに礼をして、握手を交わした。


オレの総合格闘技初挑戦はTKO勝利という結果で幕を閉じた。


忘れる事の出来ない、人生最良の日だった…


だが、オレの総合格闘技のチャレンジはこれが最初で最後になった。


この勝利から数日後、我が団体はオーナー会社が変わり、エンターテイメントスタイルのプロレス団体として生まれ変わり、総合格闘技とは今後一切関わりを持たない方針を打ち出したのだ…

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