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最強のエンターテイメント  作者: sky-high
新団体設立
42/51

最強のキックボクサー

ハシミコフとフェルナンド。

コマンドサンボVSブラジリアン柔術という、共に総合格闘技界では常にトップクラスで活躍する格闘術だ。


両者共にオープンフィンガーグローブにエルボーパッド、レガースにニーパッド、そして一際目立つのが頭に巻いているヘアバンドだ。


その出で立ちに会場から失笑が漏れたが、いざ試合が始まると、いつしかどよめきに変わった。


Diamondをはじめとする、様々な総合格闘技のイベントでは禁じられている、頭突きや肘打ち、四点ポジション(相手が両膝をマットについた状態)からの膝蹴りがTMNでは認められている。


選手の安全性を考慮して、打撃を放つ箇所にパッドを着用しているが、これはかなり危険なルールだ。


マウントを取られ、パンチのみならず、肘打ちや頭突きも加わる。


ハシミコフもフェルナンドも危険な打撃の応酬と、目まぐるしく動く寝技でのポジショニングの争い、そして関節の取り合い。


お互い何発もの打撃を食らい、関節技を仕掛けたが、フルラウンド闘い、判定はドロー。


そしてインターバルの後、10分のextra timeへ突入した。


二人とも体力の限界まで死力を尽くし、最後はハシミコフがフェルナンドのタックルを切り、バランスを崩した状態からマウントを取り、肘打ちと頭突きの連打でレフェリーストップ勝ちを収めた。


もし、エルボーパッドやヘアバンドが着用されず、肘打ちや頭突きをやっていたら、選手生命はおろか、命に関わる程の危険極まりない結末になっていただろう。


ハシミコフは目尻から出血し、フェルナンドは口から血を流していた。


無傷で勝ちを収める程、甘くはない。


場内は両者フラフラになりながらも、延長戦まで闘ったタフな精神力に惜しみ無い拍手と声援を送った。


まだ二試合しか行われていないが、観客は熱狂し、この後の試合も過激なファイトを期待している様子だ。


そして何よりも、このオクタゴンのリングのせいか、ロープ際での攻防が他の総合格闘技に比べ少なくなっている。


プロレスやボクシングで使う約6メートル四方の四角いリングに対し、TMNは9メートル以上の広さでしかも八角形というリングの為、ロープエスケープするにはあまりにも広すぎる。


改めてこのTMNという新興団体は他のプロレス団体や格闘技団体に比べ、勝敗を分かりやすくする為に工夫を重ね、それに則ったルールを作成した斬新なスタイルだと感じた。


旗揚げ戦前まで、絶対にこのスタイルでは成功しない、と佐藤さんや山田さんに詰め寄った自分の考えがいかに浅はかだったか、思い知らせれた。


第三試合はスタンディングバウト、立ち技での闘いになる。


ムエタイのヘビー級チャンピオンで、タイのプワカート・ラムチャイと、琉球唐手をベースに、日本のキックボクシング界では東洋太平洋ヘビー級チャンピオンの照屋昇吾(てるやしょうご)との一戦が始まるところだ。


総合の時と同じく、レガースやニーパッド、ヘアバンドを着用。

照屋はオープンフィンガーグローブで、ラムチャイは通常のグローブを着用した。


ムエタイ式のパンチキックに膝蹴りや肘打ち、そしてミャンマーの格闘技、ラウェイのように頭突きが採用され、スタンディングの状態からの関節技や締め技、そして投げ技も認められており、立った状態ならば、何をしてもOKという、これも危険なルールだ。


第1ラウンドは慣れないルールのせいか、互いに相手の出方を伺い、これと言った見せ場も無く、ゴングが鳴った。


1分間のインターバルの後、第2ラウンドのゴングが鳴った。


先程とはうって変わってラムチャイがムエタイ特有のムチのようにしなる蹴りで照屋の足にローキックで攻め立てた。


照屋はパンチで応戦するが、ラムチャイは冷静にパンチをブロックし、組み付いて首相撲の体勢から膝蹴りを連発。


照屋のボディに膝が食い込む。

照屋は膝蹴りをブロックしたが、ラムチャイは攻撃をガラ空きになった頭部に頭突きを叩き込み、照屋が首相撲から離れようとした瞬間、ラムチャイは照屋の顔面に肘打ちを叩き込み、ダウンを奪った。


カウント8で照屋は立ち上がったが、頭突きと肘打ちのダメージに加え、2ラウンド開始直後に受けたローキックのダメージも重なり、立っているのがやっとの状態だ。


ここぞとばかりにセコンドが大声で指示を送る。


接近戦に持ち込み、フックやボディブロー、といったパンチで攻め込み、最後は顎の上がった照屋にラムチャイはノーモーションからの頭突きが顔面にヒット、モロに食らった照屋は2度目のダウンを喫する。


あのラムチャイという選手、ムエタイのみならず、ラウェイの使い手なのかも知れない…


独特のノーモーションからの頭突きは要注意だ。


顔面血まみれの照屋はこれもカウント8で立ち上がったが、後はラムチャイのサンドバッグと化し、セコンドがタオルを投入。


2ラウンド2分37秒、TKOでラムチャイが勝利した。


【あの頭突きはヤベーだろ】


【照屋何も出来ないで完敗だな】


【しかし、最後に頭突きとはえげつない攻撃だな】


そんな会場の声が上がる中、ラムチャイはセコンドと抱き合い笑顔で勝利を分かち合った。

照屋の顔面は血に染まり、頬がかなり腫れ上がっていた。

鼻骨骨折、もしくは眼窩底骨折の可能性がある。


オレもメインでグーリットとこんな闘いをするのだろうか…


徐々に出番が近づいてきた。


おれはアップの為にシャドーをしたり、若手にミットを持たせ、蹴りやパンチを打った。


(クソッ)オレは苛立っていた。


相手の土俵で勝負するなんて、自殺行為にも等しい。


下手すりゃ選手生命、いや人生そのものが危うい可能性だってある。


急遽対戦カードを変更され、オレの心は折れかかっていた。



セミファイナルの総合スタイルの試合は、共にオリンピックの金メダリスト、オランダのステファン・クラフト対ロシアのイワン・ソロコフという、柔道とレスリングで頂点を極めた者同士の対決とあり、注目を集めた。


二人ともこの試合が総合ファイターとしてのデビュー戦でもある。


メインのオレの試合より、この試合の方がTMN旗揚げ戦の目玉とも言える。


だが、お互い初の総合の試合という事もあり、膠着した状態が何度も続き、その都度レフェリーがブレイクをかけ、スタンドからの試合を再開する場面が多かった。


いくら柔道とレスリングでオリンピックの金メダルを獲得したとはいえ、そう簡単に総合格闘技に対応出来るものではない。


特に打撃面においては、まだまだ課題の残り、フルラウンド闘い、判定はドローで10分間のextra timeに突入した。


柔道やレスリングには無い打撃とこのオクタゴンのリングの上で両者共にスタミナを使い果たし、バテバテの状態で決め手に欠いたまま、試合は終了した。


判定はまたしてもドロー。

結局金メダリスト同士の対決は、他の試合に比べ、凡戦に終わってしまい、場内からブーイングが巻き起こった。


無理もない、TMNが旗揚げを行うにあたって、両者との契約を結ぶ為にかなりの交渉期間があり、正式に契約を交わしてから総合の練習を始めたのだから、あまりにも準備期間が短すぎた。


かつての金メダリスト達はブーイングを浴びながら花道を歩き、控え室へ消えていった。



セミファイナルが消化不良に終わってしまったからには、メインイベントはそれを忘れさせるぐらいの熱い試合内容を見せなければならない。


セコンドにカーウィンが付いてくれた。


「ナオト、打撃を恐れずにガードを固めて接近戦に持ち込め。

そして組み合ったら腕や首を極め、タイミングを見計らってスープレックスで投げるんだ!

今のお前じゃ、あのキックボクサーに真っ向から打ち合っても叩きのめされるだけだ!」


カーウィンはオレの背中をバン!と叩いてアドバイスした。


いよいよ出番だ…


この立ち技の試合でオレが勝てる確率はかなり低い。


【只今より、本日のメインイベント、スタンディングバウト3分5ラウンドを行います!】


リングアナウンサーのコールが控え室まで聞こえる。


【青コーナーより、オランダ、キックボクシングヘビー級チャンピオン、ヨハン・グーリット選手の入場です!】


軽快なヒップホップの曲が流れ、スキンヘッドにした長身の黒人がセコンドを伴い、軽快なリズムを取りながら花道を歩いた。


赤のグローブに白のトランクス、レガースやニーパッド等は赤で統一し、オクタゴンのリングに上がった。


【赤コーナーより、TMNジャパン、神宮寺直人選手の入場です!】


出番だ、オレのテーマ曲が流れ、カーウィンと、道場で立ち技のコーチをするタイ人をセコンドに、ゲートに立ち、ゆっくりと花道を歩いた。


黒のロングタイツにレガース、ニーパッド、エルボーパッドにヘアバンド全て黒に統一した。


場内からは神宮寺コールが巻き起こっている。


ここまで来たからにはやるしかない、自分を奮い立たせながらオクタゴンのリングに立った。


…こんなにも広いのか?


確かに四角いリングに比べれば広い、だがオープニングセレモニーの時にリングに立ったが、その時よりも更に広く感じる。


今までは四角いリングだったが、今日からはこの八角形のリングが闘いの場となる。


不思議と緊張はしてなかった。


緊張よりも、オレはグーリット相手に立ち技でどういう戦法をとればいいのか、その事だけしか頭の中に無かった。


ハッキリ言って、勝敗なんかよりも、無事にリングを下りる事が出来るだろうか?


…いや、それはまずあり得ないだろう。


グーリットの長い手足をジッと見ていた。


パッと見はヒョロっとして、細く長い手足だが、柔軟性とバネに優れた身体だ。


必殺の右ハイキックで数々のKOの山を築いた最強のキックボクサーが、まるで獲物を仕留めるかのような肉食動物の如く鋭い目付きでオレを見ていた。


勝機はあるのか?


相手の打撃を最小限のダメージで受け、懐に入る。

カーウィンの言うとおり、その戦法しかない。


オレは大きく深呼吸した。


試合はもう始まっているようなもんだ。


リングへ上がれば、相手の力量がその佇まいで分かる。


今までで、最大の難関を迎えた。

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