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最強のエンターテイメント  作者: sky-high
新団体設立
29/51

ギガンテスの狂気

オレの帰国第一戦はメインイベントのタッグマッチ、場所は都内でも中規模のホールで、5000人近く入る。


パートナーは財前が負傷欠場している間にメキメキと頭角を現した真田敦司(さなだあつし)


コイツはオレや財前の一年後輩で、高校時代はラグビーで全国制覇を果たし、日本代表の切符を手に入れながら、それを蹴ってWWAに入団した。


192㌢120㌔という大型のレスラーで、財前とは違うタイプだが、天才タイプのレスラーだ。


ラグビー仕込みのタックルを利用したラリアットにブレーンバスターの体勢から、そのままパイルドライバーで垂直に落とす【ハイアングルドライバー】


そしてキックボクシングジムに通い、キックと掌底のコンビネーションにトップロープからのムーンサルトプレス。


巨体に似合わず、動きが速く、そして何より岩のような頑丈な肉体で打たれ強い。


まだまだ荒削りな部分はあるが、ギガンテスをバックドロップで投げた事のあるパワーも兼ね備えている。


WWAは、財前不在の間、真田をスター候補して売り出し、


WWAのヘビー級トーナメントの決勝で惜しくも準優勝を

飾った程の実力を兼ね備える。


対戦相手はギガンテスがでも、臆する事なく真っ向から勝負して、惜しくも敗れたが、評価はかなり良く、財前に次ぐスター選手として活躍していた。


この真田とタッグを組むのは初めてだ。


帰国していきなりメインとはオレもかなり期待されてるのだろうか。


だが、当日になってこのカードに待ったをかけた人物がいた。


ギガンテスだ。


彼はセミファイナルの6人タッグマッチに出場する予定だった。


この対戦カードにギガンテスは大いに不満で、

何故チャンピオンのオレがセミファイナルで、あのジングウジがメインなんだ?

と納得がいかず、レフェリーやギガンテス専属のマネージャー、フロントも説得したが、首を縦に振らない。


挙げ句には、オレとジングウジのシングルをメインにしろ!

と無茶な要求をしてきた。


それが無理なら、今日の試合には出ない、とまで言い出す始末だ。


「オレはこのWWAのチャンピオンなんだぞ!何故そのオレがセミファイナルで、あんな若造がメインなんだ?

冗談じゃない、そんな扱いじゃオレは今後一切WWAのリングには上がらない!


オレを必要としているアメリカのメジャー団体へ移籍する。

とにかくオレとジングウジのシングルをメインにしろ!」


ギガンテスはこの試合でオレを潰しにかかってくるだろう。


困り果てたマッチメーカーであり、レフェリーの金村さんはギガンテスにちゃんとプロレスをしてくれるなら、という条件で急遽、対戦カードを変更した。


「神宮寺、真田。悪いが今日はギガンテスの要求を飲むことにした。

真田、お前はセミファイナルのタッグマッチに出てくれ」


客入り前のリングでトレーニングを終えたオレたちは金村さんに呼ばれ、バックステージでその事を聞かされた。


「オレはメインだろうが、セミファイナルだろうが関係なく試合をしろと言われたらやるだけです」


真田は真面目でストイックなレスラーだ。

マッチメーカーでもある金村さんのカード変更にも文句を言わず自分の仕事をキッチリこなす、というヤツだ。


「ただ、メインの試合は大丈夫なんですか?ギガンテスは神宮寺さんに相当な恨みを持っているはずだし…」


真田もメインの試合は不穏な展開になると察し、プロレスにならないんじゃないか、と危惧している。


ギガンテスを投げた事があるレスラーはオレと財前と真田の3人だけだ。


財前はチャンピオンという事もあり、レスリングセンスも抜群で、ギガンテスは財前にボディスラムで投げられる事をOKした。


真田は元々パワーもあるし、体格も比較的大きいので、ギガンテスをバックドロップで投げた。


ギガンテスは自分が認めたレスラーにだけ、投げる事を許可した。


だが、オレの場合は違う。


ギガンテスはオレがジャーマンで投げるなんて事は予想もしていなかったし、オレの事なんかハナっから相手にしてなかった。


だが、財前とのタッグマッチで最後のカットプレーでオレはギガンテスをジャーマンで投げ、後頭部を強かに打ち付け、失神という醜態を晒した。


それだけに今日のメインはセコンド陣がいざとなったら総出でギガンテスを止めるしかないだろう、金村さんは若手レスラー達に今日のメインは全員リングサイドにいるよう命じた。


嫌な予感がする。


「で、金村さんブックはどうしますか?」


オレは金村さんに勝敗の事を聞いた。


金村さんは少し迷いながらも、ギガンテスのパワーボムで勝ちという事にしようと決めた。


「そういうワケで帰国していきなりジョブ(負け役)をやらせて申し訳ないが、頼む」


オレもそれがいいと思った。


まるで駄々っ子のようにごねてるギガンテスを納得させるにはオレがピンフォール敗けになった方がいいだろう。


ただでさえ、ギガンテスの暴走ファイトで負傷した財前をはじめとするレスラー達で今WWAはギリギリの人数で試合をしている。


仕方ない、これもプロレスの役割だ。


それでギガンテスの溜飲が下がるならオレは敗け役に徹しよう。


「神宮寺、それじゃギガンテスの控え室へ行こう」


オレは金村さんと共にギガンテスのいる外国人レスラー達の控え室へと向かった。


金村さんがドアをコンコンとノックする。


【誰だ】


他の外国人レスラーの声だ、金村さんはガチャっとドアを開けた。


控え室には数名の外国人レスラーがいて、その中でも際立って大きいギガンテスの後ろ姿が目立つ。


「ギガンテス、今日のメインの打ち合わせだが」


金村さんの声にも反応せず、ギガンテスは雑談をしていた。


「Mr.カーティス(ギガンテスの本名)お久しぶりです、神宮寺です。今日はよろしくお願いします」


オレはギガンテスに敬意を払って挨拶した。


ギガンテスは一度こちらを振り返り、ジロリとオレを一瞥しただけでまた背を向け、雑談を続けた。


ギガンテスのマネージャーで、日系三世のジェイク・カトウが代わりに対応した。


オレと金村さん、ジェイクの3人で試合の打ち合わせをして、控え室を出た。


するとジェイクがオレたちの後を追い、通路で先程の打ち合わせの件で話を続けた。


ジェイクはギガンテスと長年の付き合いで、ギガンテスの様子を見れば何を考えているのか、分かる程、気心の知れた間柄だ。


「ジングウジ、ユーは今日の試合本当にやるのか?」


今更何を言い出すんだ、急遽カードを変更して、本当に試合をするのか?って一体どういう事なんだ。


「ジングウジ。今日の試合、ちょっとでもギガンテスの技を受けたらすぐにピンフォール敗けするか、ギブアップするんだ。

今日のアイツはかなりヤバいぞ」


技を食らったらすぐに敗けろというはどういう意味だ?


「Mr.カトウ。ギガンテスはシュートを仕掛けてくるという事か?」


金村さんは血相を変えてジェイクに詰め寄った。


「…今日のギガンテスはおかしい。マネージャーの私が話し掛けても返事もしない。

出来る事なら今日の試合は止めた方がいい」


…またシュートか…


もう、うんざりだ!


「金村さん、ギガンテスは仕掛けてくるって事ですよね?

どうしますか?

これじゃプロレスにならない。オレは敗けブックを飲みますが、必要以上の事を仕掛けてきたらオレは身を守る為にシュートに対応するしかないですよ」


あんな巨体のレスラーがガチで仕掛けてこられたら、オレは応戦するしかないだろう。


「とりあえずギガンテスにはじっくり時間をかけて話をしてみる。

ユーはいつも通りプロレスをやってくれ」


ジェイクはそう言うが、とても話しに応じないような気がする。


「分かりました。ただ、これだけは言っておきます。

もし、ギガンテスがシュートを仕掛けてきたら、オレは対応するしかないですよ?

もしくはセコンド陣が途中でなだれ込んでノーコンテストにするか」


「それは無理だ」


金村さんはそのやり方は良くないという。


「メインの試合がセコンド達がリングに上がってメチャクチャにしたら、観客は納得しないだろう。下手すりゃ金返せ、と暴動を起こしかねない。

ジェイク、神宮寺からは決して仕掛けないが、ギガンテスが仕掛けてきたら、この試合はプロレスじゃなくなる。

その為にも何てしてでもギガンテスを説得してくれ」


金村さんはジェイクに託した。


「OK、分かった。ただ最悪の状況になったら私は彼を止める事が出来ない。

それでも試合をするというのか?」


おそらくジェイクはギガンテスを上手く説得出来ないだろう。


しばらくリングに上がってないせいもあるが、オレはプロレスをやるだけだ。

もし、仕掛けてくればそれに応戦するだけ、それが真のプロフェッショナルレスラーだ。


オレは再びトレーニングを再開し、若手レスラーに万一の事を想定して、ある物を用意してくれるよう命じた。

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