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第九話

 高校生活二日目。

 初日と同じように美空と肩を並べて登校した。

 今日はまだ、授業は午前だけだ。

 休憩時間は短いので、日鞠ちゃんに下校前に話し掛けることにしていたのだが……。


「何処に行きやがった……」


 美空がいない。

 そしてさっきまでいた金髪ヤンキー、鹿鳴もいない。


「………」


 不安だ!

 約束してたのに姿がないことに腹が立つが、それよりも『二人揃っていない』という事実に対する不安が勝る。

 暴走していないか探しに行こう。


「あなた、お友達になって差し上げてもよくってよ!」


 机に手をつき、立ち上がったところで声を掛けられた。


「……はい?」


 声と言葉遣いで分かっていたが、目を向けると昭和女子二人組が立っていた。

 キョトンとしていると、昭和眼鏡……池畑さんが耳元に顔を近づけてきた。


「ねえ、海人様って家でどんな様子?」

「海人様!?」


 こそっと囁かれた質問に驚き、思わず大声で復唱してしまった。

 なんで『様』がつくんだ!?


「わたくし達は友達だから、今から家に遊びに行って差し上げますね。さあ、案内なさい」

「ええ……?」


 ご遠慮します。

 『家に連れて行け!』なんて面倒な人だな。

 入れ替わっているという問題が解決していない間は誰も家には近づけたくない。

 解決してもこの二人は……ちょっと嫌かな。


 やんわり断ろうとしていると、視界の端で日鞠ちゃんが帰ろうとしている姿が見えた。

 もう教室を出て行くところだ。

 ああ、今日も話せなくなってしまう!

 美空め、どこにいるんだ!


「何をしているの?  早く行くわよ! 海人はもう家に帰っているのでしょう?」

「『海人』!?」


 こっちは呼び捨て!?

 というかこの二人は美空が目当てなのか?

 何故だ……俺が俺の時にはモテないのに!

 分かっていたがそんなに違うのか!?


「いや、ごめん。カイトは多分まだ帰っていないから。じゃ!」

「ちょっと、あなた! 待ちなさい!」


 二人の間を掻き分け、強引に進んだ。

 日鞠ちゃんの姿は見えなくなったが、まだ間に合うはずだと急いで昇降口を出たのだが……。

 校門まで走ったがその姿を見つけることは出来なかった。


「今日も駄目だった……」


 泣いてもいいですか。

 いつになったら話せるんだ!


「悲しい……」


 悲しいが、だ。

 だからと言って休んでいる余裕はない。

 日鞠ちゃんの方は駄目だったが、美空が暴走していないかも確認しなければ。

 どうせ鹿鳴のことを追いかけているのだろう。

 鞄があるからまだ学校にいるはずだ。

 急いで校舎に引き帰した。




 ※※※




「……いた」


 廊下を歩き回り探していると、二人がトイレから出てきた。

 トイレから出てきた……トイレから出てきたっ!?


 え、え……まさか………早くない!?

 いや、流石に早とちりだと思うがあの美空だ。

 可能性は無きにしも非ず!


 今、廊下には誰もいない。

 普通に立っていると美空に見つかる。

 こっそり様子を見ようと階段に繋がっている壁際に隠れた。


「「……」」


 一緒に出て来たが会話はない。

 だが鹿鳴は美空を睨んでいて……そのまま美空とは違う方向に消えていった。

 良かった……のか?

 中で何があったか分からないので不安だが、『場所を移して何かをする』ということはなさそうなので一先ずは安心だ。


 一方足を止めていた美空は、暫くすると鹿鳴が去って行く背中を見て……ニヤリと笑った。


 うわあ……。


「あれ、ミソラ?」

「……今のはどういうニヤリだ?」

「あは、見られちゃった?」


 屈託の無い笑顔が余計に恐怖心を煽る。


「トイレで何をしてたんだ!?」

「ちょっとね」

「『ちょっと』って何!?」

「いや、目視確認しただけ。良かったね、勝ったよ! バンビちゃんも悔しそうだったよ」

「そうか、勝ったならいいか……ってなるか馬鹿! 何確認してんだ!」

「ナニだけど?」

「お前嫌い」

「攻めとしてはそこは負けていられないもんね。良かった良かった。これで心置きなく掘れる」

「もういやだ! 聞きたくない! もう喋るな!」


 もし俺が『サイレント』の魔法を使うことが出来たなら、途切れること無くかけ続けてやるのに!

 赤字でバッテンをつけられたマスクをつけてやったら黙るだろうか。


 まだまだ抗議をしたいところだったが、廊下の奥から人がやって来る姿が見えた。

 誰にも聞かれたくはない会話内容だ。

 美空の腕を引いて教室を目指しつつ、声を潜めて怒りをぶつけた。

 

「お前、そんなことを確認するために約束すっぽかしたのかよ!」

「え? トイレに行ったら偶然いたからつい……。水沢さん、もう帰っちゃった?」

「帰ったよ!」

「ごめん! 明日は必ず守るから! 最優先で!」


 申し訳なさそうにしている顔に嘘はないと思うが信用仕切れない。

 『楽しいこと』があったらあっさり優先順位を下げられてしまいそうだ。


「本当かよ。頼むからな!」

「任せとけ」

「鹿鳴と変なこともするなよ」

「変なことって何? 何? 詳しく教えて?」

「……セクハラか」


 前から変な妹だったが、体が代わってからは悪化している気がする。

 外部にこの『変』が漏れる前に戻りたいなあ。

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