プロローグ
繰り返される歴史。
変わらぬ結末。
もう、飽きた。
何千年と続くこの世界の歴史の中で、百年に一度、七つの役割を持った異邦人が現れた。
一つは、世界を脅かす脅威となり。
一つは、世界を救う剣を持ち。
一つは、世界を回す仕組みを作り。
一つは、世界を強くする仕組みを作り。
一つは、世界を記す書物を作り。
一つは、世界の均衡を保つために命を捧げた。
そして、その代償に、最後の一人は世界の罪を担う咎人となった。
彼は、生きとし生けるモノの全ての罪を贖う為に、現れたその時から投獄され、生涯を終えるまで自由になる事を許されず、未来に希望を持つことも許されず、活きることも、死ぬことも許されず、寿命を迎えるまで、繋がれ続ける。
十字架を背負った彼に、人々は感謝するだろう。だが、日に日に感謝は薄れ、忘れ去られ、何れ、いなかった事にされた。
いつからか、異邦人の存在は六人とされ、七つ目の役割を担う異邦人の存在を知る者は、彼を見続ける「咎守」の一族のみとなった。
時は巡り、世界を脅かす魔王と、それを打ち倒す勇者の茶番劇を幾度となく繰り返し、長い間、沈黙を守っていた眠れる獅子は、目を覚ました。
いや、正しくは、覚めざるを得なかった。
世界は変わった。繰り返されるはずの歴史は、とある一人の男によって、その全貌を闇に投げ捨てられることとなった。
これは、混沌とした世界の罪を、己の手で贖いに行く男の物語である。