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温く優しい世界で  作者: シクラメン
序章 少女、拾いました
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1-8 一夜明けて(少女視点)

 朝起きたら、彼が居なかった。

 急に不安になって、子供のように泣きたくなる。捨てられた子犬のようにあたりを見回し、部屋から出てみようかと考えていると彼が桶をもって帰ってきた。

「起きた?おはよう」そう言いながら桶を脇に置いた彼は水差しから甘い水を注いでくれた。

 なにが嬉しいのか、私が飲んでいる間ニコニコとこちらを眺めているので、私も嬉しいやら、ドキドキするやら、どうしていいかわからなくて困った。

「汗がひどいからこれで体を拭いて、こちらの服に着替えなさい」

 彼がそう言うので、すぐに服を脱いで体を拭こうとしたら、慌てて後ろを向いて「お・・終わったら呼んでくれ」と部屋を出ていってしまった。

 骨の浮いた女性らしさのない身体ではあるが、少しは意識してくれたのだろうか?だとしたら嬉しい。

 朝食は昨日よりすごかった。昨日は理性が飛んだが、今日は何とか我慢した。

 ただ、白くて冷たい(アイスというらしい)は甘い水より甘くて冷たくて美味しかった。思わず私がこれを食べていいのかと彼の顔を見てしまったくらいだ。

 昨日と同じ薬を飲み、彼が寝癖の付いた髪を梳いてくれる。どうやら汚くしていたため、虫が住み着いており、それが原因で頭が痒くなっていたらしい。

「全部取り終わるまでは少しかかるな、我慢してくれ」

 などと言うので思わず首を振ってしまった。折角整えてくれた髪がくしゃくしゃになって悲しくなったが、彼が苦笑しながら直してくれた。

 そのあと彼が「ハミガキ」というのをしてくれた。なんでも歯を磨かないと口の臭いの原因になったり、虫歯(歯に穴が空いてしまう病気)になるそうだ。

 彼の膝に乗せられて背中から抱き抱えられるようにして磨かれた。ドキドキしてしまってこれはいけない。唾液が溜まったら彼の手を握るように言われていたのだが、思わず涎が垂れ流しになってしまった。

(恥ずかしい・・・・)


 そのあと彼が時々顔をしかめていた原因がわかった。

 どうも路地裏で生活していた私はとても酷い臭いがしていたようだ。

 昨日まで着ていた服を彼が持ってきて「これは捨ててもいいか?」と聞いてきたとき、その服が凄い臭いを発していたからだ。

 なんだろう、今まで恥ずかしいと思う余裕すらなかったのに、彼には恥ずかしいところばかり見られている気がする。

 だが不思議と嫌ではない、それどころか 嬉しく思ってしまう自分がいる。

 彼の生活はかなり普通の人とは違い、魔法の様な道具を多数所持しているが、詮索はしないでいよう。彼のそばに少しでも長く いられるように・・・・。

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