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温く優しい世界で  作者: シクラメン
序章 少女、拾いました
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1-4 ロリコンではありません(男性視点)

 彼女をソファーに座らせ、経口補水液をコップに一杯だけ注いで飲ませる。

 風呂上がりだし、これくらいの水分補給は必要だろう。

 症状の確認のため熱を測らせ、口の中の様子を確認する。口内炎だらけで腫れあがった口腔内は扁桃腺まで真っ赤に膨らんでおり痛々しい。あまり喋らないのはこちらを警戒してというより、喉が痛いのかもしれない。

 水差しに残った経口補水液にすりおろした生姜と蜂蜜を加えレンジで温め、少しずつ飲ませてやる。

 熱いためマグカップに移したそれを両手で抱えながら少しずつ飲む少女は少し血色もよくなったように見えた。

 その間に何か食べるものも用意しておこうと少女を残して台所へ向かう。

 といっても米くらいしかすぐに食べられるものがなかったので、手抜きではあるが中華粥を作ることにする。鍋に顆粒の出汁と水を入れて一度沸し、米を投入したら弱火にして少女の元へ戻る。

 少女はこくりこくりと船を漕いでいたが、路地裏で寝ていた習性なのか近づくとすぐに顔を上げる。

 まずは乗せたまま放置していたタオルを外して、ゆっくりと髪をブラシで梳く。

 虫まで拾った覚えはないので、虱の卵は目が付いた端から取り除く。

 ある程度梳いたらドライヤーできちんと乾かしながら、さらに引っ掛かりがなくなるまで梳く。

 前髪が長いようで顔の半分が隠れてしまうので、おでこの上でまとめて縛る。年頃の女の子にする髪型ではないが許してもらおう。

 実際、女性の前髪のセットなどしたことがない。三つ編みくらいなら子供の頃、同級生がしているところをみていたのでやれなくはないが、今は早くこの子を休ませることが大切だ。

 そうこうしているとぐつぐつと鍋が音をてて煮立ったので、戻って中華スープの素を入れてかき混ぜ、さらに卵を落として一回しして完成だ。

 インスタント調味料は偉大だ、短時間で作るときには重宝する。

 まぁ、自分で出汁から取ったほうがより好みの味に近づける分好きなのだが、忙しくて料理なんてしてなかったなと思い出す。

 味見をして一度頷くと、器に移したそれに氷を三つほど入れて軽く回し冷ます。

 なんとなくだができたものをそのまま持っていくと火傷する勢いで食べようとする気がしたのだ。

「ゆっくりお食べ」

 一応そう言ってみたが、案の定すごい勢いで食べ始めた。犬食いというのだろうか、初めて見たが逆手にスプーンを持ち口まわりを汚しながら食べる姿はやはり餓鬼そのものである。

 年端もいかない子供がここまで苦労しているというのは心にくるものがある。

 シャツを汚さないようにタオルを首から胸にかけてやりナプキンのようにし、もう一つのタオルで口元を拭いてやると、少女はにこーっと笑って「ありがとう」と言った。

 怯えや恐怖以外では初めて見た子供らしい感情だと思う。

 身綺麗にして少しはまともな姿になったためか、かわいらしいと思えた。

 やはり子供は笑っているのが一番だ。

 ビタミン不足を考えて冷蔵庫から野菜ジュースを取り出し、お腹を冷やさないようにレンジで温くして与えてやるとこれも一気に飲み干した。

(出したら出しただけ食べそうだな)

 そう思ってこれ以上は体調が戻ってからにしようと思う。

 そうして眺めているとお腹が空いてきたので、自分の分も用意して少女と向かい合って食べた。

 時折、少女は手を止めて見つめてくるが、何かを言うことはない。

(警戒してるのかな?)

 どことなく、こちらを知ろうとして観察しているようにしか見えなかったので笑顔で見つめ返してみた。

 そうすると少女は俯くようにしてまた食べ始める。

 その姿は小動物を見ているようで面白い。

 あまり、食べさせすぎるのもよくないがその食べっぷりに、もう少しだけ勧めてみると、「いいの?」っと目を輝かせ、首をぶんぶんと縦に振った。

 いかん、甘やかしてしまいそうだ。いや、すでに甘やかしている。

 まぁ、尿は出ていたようなので脱水症状はそこまででもないようだし、路地裏とはいえ、嘔吐物などを見るに食べたうえでの発熱だろう。

 不安になったが、嬉しそうに食べる少女を見ていると、大丈夫だろうと思えた。

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