2-15 報酬と疑いと
「こちらが昨日の報酬、銀貨23枚になります」
そう言ってノルンさんが出した銀貨は結構な量にみえた。
「ゴブリン13体、ホブゴブリン1体、オニクマ1体分です。お間違えはないですか?」
ゴブリン1銀貨、ホブ4銀貨、オニクマ6銀貨ということらしい。
「間違えてはないですけど、多くないですか?」
そう聞くと、ノルンさんはリリーを抱え上げて、膝に乗せつつにっこりと笑った。
リリーはされるがままに、ノルンから飴をもらって舐めている。
(子供好きなのかな?)
そう思いながらリリーから目を上げると
「あぁ、今回無茶させた罰として、ボルドさんの報酬をそちらに全額載せましたので・・・」
言いながら、満面の笑みでリリーの髪をセットしていく。
やはり前髪をひとくくりにまとめていたのはダメだったか。
「え?それは悪いですよ」
さすがに遠慮すると、他の職員が受け取っておけと手を合わせるジェスチャーする。
何かあったんだろうか?
「ボルドさんは納得済みですので大丈夫ですよ。それでもお気になさるのなら、ご飯でもおごってあげればよろしいのではないでしょうか?」
そういってノルンさんはリリーの前髪をある程度後ろに流して、ポニーテールにして紐で括り、余った分はサイドに流した。
あ、それかわいい
「手櫛でごめんなさいね?次からは自分でできる?」
そうやってリリーを降ろして頭を撫でているノルンさんは満足げだ。
「うん、ありがとうがざいます」
頷いてお礼を言うリリーはちょっと舌が回ってない。
飴ちゃん口に入ってるもんな。
「そうですね、そうします」
そう言って髪のお礼を言って立ち上がると、リリーがてててっと寄ってきて左手をつかむ。
「あと、そうですね・・・。お節介かもしれませんが毎日狩りに出るのはやめたほうがよろしいかと」
そう忠告するノルンさんの顔は少し心配げだ。
「そうですね、日に5~6銀貨は稼げそうなので。ボルドさんにも言われましたが、一日置きくらいにしようと思っています」
食費だけなら二日に一度狩りをすれば賄えるし、慣れてくればもっと稼げるだろう。
狩りをしない日にはやりたいことがあった。
せっかくファンタジーの世界に来たのだ。
装備を見て回るのも楽しいし、なにより魔法を覚えたい。
「休みの日は、魔法の勉強をしようかと」
そう言うとノルンさんは驚いた顔をしたあと「使えるんですか?」と聞いてきた。
「いえ、使ったことがないので魔法書で勉強してみようかと思いまして・・・」
(・・・、魔法が使えて中級並の戦闘ができる冒険者がどんなものかわかってないようですわね)
ノルンは頭を抱えた。
ボルドやノルンの様な上級冒険者は知っているが、厳密な意味で魔法が使えない人間はこの世に居ない。
魔力の操作に得手不得手があるだけなのだ。
ボルドのように魔力を外に出すことが苦手な者は体内での身体能力強化に魔力を使用するし、ノルンのように体外での魔力操作が得意なものは魔法として外に打ち出したり、メイスを振るうときに加重を掛けるような使い方をするのだ。
体内で魔力を使うものは体外に打ち出す魔法とは相性が悪い。どうしても肉体に魔力をとどめてしまうため、威力が極端に低いのだ。
「そうですね、魔法書であればここから3つ先の通りにある古書店がお勧めですわよ」
そう言って珍しい本の置いていない、組合に協力的な本屋を紹介する。
もちろん値段も初級冒険者向けのものが多く、安く手に入る。ただ、どういったものを買ったのか組合が確認しやすいだけだ。
「この後本屋を探すつもりでしたので助かります」
そう言ってお礼を言うユウキに裏はなさそうなのだが・・・。
(本当にこの方はどういった方なのでしょうかね?)
疑いすぎかとも思うが、これも仕事だ。
「いえいえ、困ったら組合のほうでも簡単に教えていますので受付で申し込んでくださいな」
さすがに手の内を晒すような場所に練習には来ないと思うが、一応の布石を打つ。
(もし来てくれたら儲けものですね)
彼の実力がどれくらいのものか、ノルンは興味津々であった。
ボルドに才能があるといわれる肉体能力に、どれくらい魔力操作ができるのか・・・・。
もし来たら自分が直接相手をしようと思う。
「ありがとうございます。魔法書を読んでみて出来なかったらこちらにきますね」
そう言ってユウキが笑う。
(ほんと、到底冒険者になるような人には見えませんわね)
話せば話すほどわからなくなる、ノルンにとってユウキはそんな人間だった。




