表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
温く優しい世界で  作者: シクラメン
序章 少女、拾いました
2/52

1-2 お風呂に入れました(男性視点)

 少女は抱き抱えられると意識を失った。

 医者に連れていこうとも思ったが、この街に来たばかりの自分には場所すらわからず、他に頼るような当てもなかった。

(家に連れて帰るか・・・)

 そう思って抱き直すと、言いようがない臭気に襲われる。

 嘔吐物、排泄物、垢、腐臭様々なものが混ざった臭いに吐き気が込上げるがなんとか家まで連れ帰った。

 命にかかわる状態ではあるが、さすがにこのまま布団に入れ飲食させるのは辛かったので、風呂を沸かすことにする。

 少女は毛布に包みソファーの上にタオルケットを敷いて寝かせた。さすがに床に転がすわけにもいくまいとの判断だが、小刻みに震えている少女を見ると急いで暖を取らせ、休ませたほうがよさそうだ。 起きたときのことを考えて、簡単に塩と砂糖と水を混ぜた経口補水液を水差しに用意し、電子レンジで軽く温め、コップと一緒に並べて置いて、風呂の支度にとりかかる。

 風呂はあまり熱くしても辛いが、あまり温くてもそのあとが寒いので40度程度にしておいた。抱き抱えた感じでは熱は高そうなのでそう熱くは感じないだろうが、手足は凍えていたようなので少し痺れを感じるかもしれない。

 そんなことを考えながら自動湯沸かしをセットして戻ると少女はすでに目覚めていた。

「ここは私の家です。安心してください」

 そう言ってから近づくと、水差しからコップに補水液を注ぎ飲むように差し出した。

 一瞬びくりと震えた後、恐る恐るといった感じではあったが受け取ってくれた。

 戸惑っていたが一口口を付けた後は結構な勢いで飲んでいたため、2杯目を注いでやり、そこで止めておいた。

 飢餓状態の人間に一気に飲み食いさせると死ぬことがあると何かの本でも書いてあったので、気を付けるに越したことはない。

 飲み終わった後は、服を脱がせ風呂に入れようとしたが、さすがに服を脱がせるときだけは多少の抵抗を見せた。

「服を脱いで、体を洗います」

 そう言ってシャツの裾をつかみ、一気にまくり上げるようにして脱がせ、腰で結んだ紐をほどきズボンを剥くと、抱き抱えて浴室に入る。

 骨が浮き、赤い湿疹があちこちに痣をつくり、乾燥と冷えでひび割れた肉が痛々しかった。風呂から出たら保湿用のボディクリームを塗ろうと決め、ガチガチと震えてだした彼女を抱きかかえ湯船につけた。

 洗ってから湯船に入れたかったが、さすがにこの状況では冷えた体を温めることが最優先である。

 そうして湯船に入れると先ほどまで震えていたのが止んで、こちらを見上げてきたので「寒くない?寒かったらもう少し温めるよ」というと、すごい勢いで首をぶんぶんと振ったので、髪でお湯が跳ねて、少し濡れてしまった。

 少女は申し訳なさそうにしているが、あまり身動きしなくなったのはありがたい、さっさと体を洗わせてしまおう。病人に長湯は危険だ。

 少女に、タオルを渡し湯船の中で体をこするように言い、湯船にもたれかけさせると、シャンプーハット代わりに手拭いをねじり鉢巻きにして巻いてやる。

 髪のほうは、やはり虱だらけだった。予想はしていたので私は帽子を被っている。そうこれくらいで見捨てるくらいなら、拾ってはこない。

 だが臭い、虫が湧いている、肌だってぼろぼろで爛れており、餓鬼にしかみえない、とてもじゃないがかわいらしいとは言えない。

 それでも見捨てられなかったのだ、仕方ない。

 そう思いながら、垢が浮かんで白く濁りはじめた湯船を見つめ、私は、少女を手早く洗う。

 シャンプーをつけ、髪を梳くように虱を取り、シャワーで流し、繰り返す。当然のごとく傷んでおり、枝毛や絡みもひどかったため、リンスを付けた後ブラシを持ってきて梳きながら馴染ませる。

 虱取りはもちろん継続である。1週間もあれば除去できるだろう。

 途中お湯が冷めないように追い炊きしながら、たっぷり20分は髪を洗い。

 終わると石鹸で軽く全身を洗い、シャワーで流す。

 病人にこれは危ないだろうと反省するが、それでも日本育ちの自分には耐えられなかったのだ。

 風呂から上がるとバスタオルで髪をまとめてやり、タオルドライ状態で放置し、ひとまずドライヤーをかけてやるのは後にする。

 湯冷めしないよう、手早く全身にボディクリームを塗り、肘や腋、膝などの湿疹が酷い部分に包帯を巻いてやり、あかぎれに薬を塗りながら絆創膏を貼っていく。

 さすがにあかぎれを触られると痛いのか少し顔をしかめたが、特に抵抗はせずにされるがままになっている。おとなしくて助かる。

 子供服などないので服装は悩んだが、ボクサーパンツの前が開いてないものを穿かせ、スポーツブラの代わりにタンクトップ、七分丈のシャツを長袖代わりに着せる。

 また、冬用のタイツとジャージを穿かせ、裏起毛のトレーナーを着せて完了である。

 自分のものなのでだいぶだぼだぼだったので裾や袖を折ってやり動きやすくしてやる。

 初めて母親以外の女性と風呂に入ったにしては頑張ったと思う。

 だから、歯磨きはまた今度教えるとしよう、口が臭いだけなら我慢ができるはずだ、そう思いたい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ