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温く優しい世界で  作者: シクラメン
一章 お金を稼ぐ難しさは社会の余裕に比例する
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2-8 まずは装備を揃えよう

 冒険者登録自体はすぐに終わった。

 ノルンさんが先にいろいろと記入しておいてくれたようで。名前と年齢、過去の賞罰くらいしか書く部分がなかったからだ。

 浮浪者対策も兼ねているようなので、あまり難しくせず管理しやすいようにしているのだろう。

「その木板は身分証代わりだから無くさないようにね?」

 そう言って笑うノルンさんはすこし、いや、かなりの美人さんだと思う。

 ボルドさんいわく「組合の受付嬢なんかは亭主をなくした未亡人の仕事だ、惚れるなよ」とこっそり教えてくれたので、やはりしっかりした統治機構があるみたいだ。

 それに未亡人ということを教えておけば同情的な人も出てきて、あまり問題も起きないのだろう。色恋沙汰の問題は起きそうだが・・・。


「まぁ、なんだかんだ説教はしたが。教えるからには手は抜かねぇ」

 ボルドはそう行って最初にお勧めしてくれた武器具店に連れていってくれた。

 道中リリーがボルドのことを視線だけで殺せるんじゃないかというぐらい睨んだり「おじさん嫌い」とか「ハゲ」とか「汚ヒゲ」などと言って絶望させていたが、それを止める勇気は私にはなかった。(どうもノルンさんに仕込まれたらしい)

「まず、初心者にお勧めする武器なら棍棒・・・、それもメイスだな」

 そう言いながら武器屋の中をずんずん進むボルドはここの常連の様で、店主も軽く手を上げただけで素通りさせる。

「なんでメイスがお勧めかっていうとな、斧や剣みたいに刃を立てる必要がねぇってことだ。わかるか?」

 そういって店に並んでいるメイスを次々手に取りじっくりと見まわしていく。

「えっと、相手に軸を合わせて当てるだけでダメージが狙えて、重量から足りない力を補えるからですか?」

 少し考えてそう答えると、ボルドはニカッっと笑い。

「そうだ、それに刃なら変な方向から当てりゃぁ欠けたり曲がったりしちまうが、メイスならそういった心配はねぇし手入れも楽、おまけに連戦に不安を感じることもねぇ・・・・・。ん、こいつはいいな」

 そういってボルドが手に取ったメイスは少し小振りのもので六角レンチを先に行くほど太くした、金属バットのグリップの曲線を真っ直ぐにしてグリップに板と布を巻き込んだようなものだった。

「この手元が細くなってるのに握り手はまっすぐってのは、曲げてある部分から折れやすくなっからで、普通は先だけを太くしたメイスが頑丈なんだが、先端が重くなりすぎて手首を痛めやすい、先端で当てねぇとダメージが出せねぇ。こいつは手元に木板を嵌め込めるようにして、さらに布で厚く巻くことで直線的に太さを持たせてっから全体的に軽い。根元で当てても先端との重量比がそこまでねぇから当たりが軽くならねぇ、初心者にも使いやすいだろうよ。まぁ、勢いは使えなくなっちまうがな。」

 そう言うとグリップ部分の布を少しずらして下の木板を見せてくれた。

 言われるがままに握ってみると、グリップサイズもちょうどよく手にすっぽりと収まった。

 ふむ、先端を下手に重くして当てにくくするくらいなら、棒に近い形状のほうが使いやすいってことか。

「握りにくけりゃ多く布を巻くか、減らすかで対応するんだ、削ると強度が落ちるからな。あー、根元に木板を当ててからグリップを巻く利点がわかるか?」

 今度はさっぱりわからなかった、リリーもわからないらしく先ほどまではボルドを睨んでいたのに、かわいらしく首をかしげ「なんでだろ?」と言いたげな目で私を見ていた。

 私にもわからないからそんな目で見るのはやめてください。

 しばらく悩んでいると、ボルドが答えを教えてくれた。

「硬いものを殴るとな手が痺れんだよ。それを防ぐために敢えて木板を仕込めるようにしてんのさ。グローブなんかで対応しようにも握れる太さは変わんねぇか らな下手に布で厚みを増すとメイスの芯自体が細くなりすぎてすぐへたっちまう、だから強度的にまだましな木で衝撃を和らげてんのさ」

 そう言うと軽く握った拳でコツンと頭を小突かれた。

 直線のまま曲げず、その部分に木板を当てることでグリップ部分を作って、折れやすくなる曲がりはじめをなくして、グリップエンドまでつけてすっぽ抜けないようにしている。つまりはそういうことらしい。

 ぶっちゃけこれ片手で振れるように少しだけ短くしたバットだこれ!

 いや重さはバットより重いし、金棒のほうが近いか?

「木板が割れたら交換と点検に来るようにしてりゃ戦闘中に壊れるようなことはめったにねぇから安心しな」

 ボルドそう言っていつものガハハ笑いをして防具を選びに行った。


 防具はあっさりと決まった。

 重さで動けないことを警戒してチェストプレートに脇をカバーする薄い板金が何枚か付いたレザーアーマー、肩に関しては盾を持つので特に必要ないといわれ、最後に滑り止めの付いた肘まであるレザーグローブだけになった。

「動きにくいし、メイスと盾振ってりゃそうそう肩や頭には当たんねぇよ」

 ボルドはそう言って鉄製のレッグアーマーを持ってくる、脛の部分だけに鉄板を当てて後ろで縛るタイプだったが、これが意外と馬鹿にならないのだそうだ。

「盾を中段に構えて、腰を落として戦うのが基本になるから太ももや股間もめったに攻撃を食らわねぇ、逆に自分より背が低い相手の場合、脛みたいな場所は倒れこみながらでもきりかかってくることがあるからな、多少重くてもしっかりしたのをつけるこった」

 なるほど、初級冒険者じゃ大型モンスターなんて相手にしないから完全に小型から人間サイズまでのモンスターに絞った装備で慣らすのか。

 細かく説明してくれるボルドには足を向けて寝られないと思う。

 ただ面倒を見るだけならこんなことまできちんと教えず、装備を選んでやるだけでいいのだ。

 彼はこの先も私やリリーが生きていけるように考えて教えてくれている。

 ただ値段ははっきり言って初級向けではなかった。

「全部で12金貨だ、ボルドの紹介でもびた一文まけねぇからな」

 そう言った店主に向けた私の顔は引きつってなかったと思う。・・・・たぶん。

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