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温く優しい世界で  作者: シクラメン
一章 お金を稼ぐ難しさは社会の余裕に比例する
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2-6 それからそれから

 リリーが泣き疲れて寝てしまったので昼食の支度をすることにした。

 側についていてあげたほうがいいのかもしれないが、そうのんびりしていられるほど余裕があるとも思えない。

 リリーが起きたら冒険者組合に行って、冒険者登録をしよう。

 子供がいる以上、拘束日数が長い商人組合で、下働きから信用を積み、経理の経験を活かすという手段は使えない。

 戦うための装備を買い揃えるにもすぐに手に入るとは限らないし、どんな武器が向いているのか、実際戦うにあたって予行演習なんかもいるだろう。

 どんな生き物がいてどういう習性なのか、そういったことも調べないといけない。

 時間は有限で、注ぎこんだだけ良い結果に繋がる可能性が上がるのだ。

「まぁ、やっぱりファンタジーな世界に来たんだし。モンスターがどんなのかって興味あるし・・・」

 そう言いながらお昼はうどんにしようと思った。

 楽だし・・・、いやだめだ、リリーが食べにくい!

 くっ・・・、スプーンやフォークしか使えない子供でも食べやすくて消化にいい食べ物は・・・考えるんだ!

 昨日から粥続きだし、せめてうどんくらいの歯ごたえのあるものを食べさせてあげたほうがいいかもしれない。

 よく噛まないと顎や歯の発育が悪くなって歯並びが悪くなるっていうし・・・

 そうやって散々悩んだ結果、かぼちゃをオーブンレンジで蒸かし、すり潰し、卵黄、牛乳、生クリーム、砂糖を投入、少し硬めのムース状にする。そこへ香り付けにシナモンパウダーを軽く振りかけたら薄切り食パンに挟んで完成。

 かぼちゃのムースのサンドイッチ(手抜き版)といったところだろうか?

 これだけじゃ寂しいので朝作ったコンソメスープを温め直した。

 そうだ、デザートにプリンも付けよう。

 まぁ、現代人として動物性たんぱく質が足りない気がするが、肉をガッツリ食べるというわけにもいかないのでこのくらいにしておこう。甘いものが多く子供の食事としてもダメな気もするが・・・、明日から気を付ければいいだろう。


 目が覚めたら、今朝目覚めた部屋で布団を掛けられていた。

 あんなに泣いたのはいつ振りだろうか。

 とてもすっきりした気分だ。

 周りに誰もいなかったが、ご飯を食べた部屋のほうからトントンと音が聞こえる。

 こんな風に誰かが居てくれる。それだけで嬉しい・・・。

「ん・・・、泣いちゃダメ、しっかりしないと・・・」

 ユウキさんはここがリリーの家だと言ってくれたけど、しっかりしないと捨てられるかもしれない。

 だから、迷惑を掛けちゃいけない。もうかなり掛けてしまったような気もするけれど・・・・。

 泣いて、少し熱っぽい瞼をぐいっと拭うと、私はユウキさんがいる部屋へ向かう。


「おはよう、リリー」

 そう言って笑いかけてくれる彼はすごく眩しい。

 思わず頬が緩んでしまって、顔が上げられなくなる。

「お・・・、おはようございます」

 すごく幸せな気分だったが、部屋に漂ういい匂いと、彼がしていることを見て、ご飯を用意してくれていたのがわかって焦り感じる。

 やってしまった・・・。手伝わないと、役に立たないといけない。

 慌てて、彼の側へ行き「手伝います・・・」というと、

「ありがとう。リリーはいい子だね」と頭を撫でられた。

 手を頭の側に持ってこられるのは怖いけど、彼の手は嫌じゃない。

 まだ嫌われてないとわかって安心できるから。

「じゃあ、これをテーブルに並べてくれる?」

 そういって彼が差し出したのは白いパンに黄色い何かがたっぷり挟まれたサンドイッチだった。

 初めて見る食べ物だけど、これもいい匂いだ。

(きっとおいしいんだろうな)

 そう思っているとお腹がくぅっと鳴った。

「ははは、すぐにご飯にしようね」

 そういって笑ってくれる彼を見ていると、恥ずかしかったのに、もうどうでもよくなってしまって私も笑った。

 声を出して笑うなんていつ振りだろう。

 こんな日がいつまでも続いてくれるように、私は居るかもわからない神様に祈った。

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