2-5 これからのことを話し合おう2
「ごめんね?急におっきな声だしてびっくりしたよね?ほんとうにごめんね?」
まだ、かすかにしゃくりあげるように泣いていたリリーの頭を撫でながら、何が悪かったのかと祐樹は先の行動を考えていた。
だが考えてもわからなかったので「とりあえず謝れ」という結論に何度目かのループを果たしただけだった。
「だ・・・、だいじょうぶ?」
もはや祐樹のほうが泣きそうであったが、そう聞くと、リリーは顔を胸に埋めたまま微かに頷いた。
「聞くだけでいいから聞いてね」
そう前置きして、祐樹は昨晩考えていたことを話す。
「まずさっきも言ったけど私は泉 祐樹、24歳。これから君がどうするのかを話し合おうと思っている」
そこまで言ってリリーの様子を伺うと、少し充血した目をあげリリーは確かに頷いた。
「・・・・リリー、たぶん13歳くらい」
年齢に驚いたが、同じように自己紹介をしてくれたことから、特に嫌われているというわけではなさそうで祐樹は安心した。
「そう、ありがとう。リリー」
そう言って笑うと、頭を軽く撫でてやる。
少し首をすくめるような動作をしたが、昨日のように怯える仕草もなく、拒絶はされなかった。
「リリーに両親がいるのか、家があるのかわからないけれど。帰りたいのなら手伝おうと思っている」
そういうとリリーは先ほどよりも大きく肩をすくめ俯いた。
「もう・・・ない・・、全部・・・」
その言葉の意味、全部というものがどれほどのものかはわからなかったが、コミュニケーションが苦手な祐樹にも、彼女に行く当てがないことが理解できた。
その言葉を聞いて、「今、なにかしてあげたい」そう思ったのはある意味当然なのかもしれない。
異世界にきていろいろ不安があるとはいえ、祐樹自身にはまだ余裕があった。
今日、明日にも死ぬわけではない。
だから、同情か庇護欲か、はたまた憐れみか、衝動に押されるがままにリリーを抱きしめる。
「なら、大人になるまでうちにいなさい。今日からここがリリーの家だ」
本当は、もっといろんなことを話そうと思っていた。
これからどうやって生活していくのか、この世界の常識を教えてほしいこと、教えてもらうかわりに大人になるまで面倒を見ること、もし二人で暮らすことになったら家でのルールや家電の使い方や危険な物や触ってはいけないもの。
そういったものはすべて吹き飛んでいた。
いまはただ、この幼子を愛してあげよう。
再び声を上げずに泣き出したリリーを抱き直し、そう強く思った。




