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温く優しい世界で  作者: シクラメン
一章 お金を稼ぐ難しさは社会の余裕に比例する
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2-4 これからのことを話し合おう

 朝食後、拾った少女の調子が思ったより良さそうだったので、これからのことを話すことにした。

「まず、初めに自己紹介をしようか」

 昨夜は緊急事態というのもあるが、名前すら聞いていなかった。

 抜けているとか要領が悪いとか言わないでくれ、そういった対人スキルが絶望的だったからこそ、ブラックな会社で経理なんて評価もされない仕事に追い回されていたのだから。

「私は泉 祐樹といいます」

 そう言って、少女の言葉を待つ。

「・・・リリー」

 どこか、硬い表情で答えた少女は、不安げに胸元に手をあてる。

(んー・・・、なんでだ?かなり友好的に接してきたつもりなんだけど・・・。)

 そう考えて昨日のことを思い返すと、


  1.知らない男にいきなり家に連れ込まれた

  2.そもそもいきなり担ぎ上げられ、意識のない状態で連れていかれた

  3.いきなり服を脱がして、風呂に叩き込むって・・・


 上から順に、

  1.下手すれば誘拐。

  2.下手しなくても誘拐+セクハラ。

  3.セクハラというより青少年保護法違反+強制猥褻罪。


(やばい、この世界の法律は知らないが、どう考えても完全にアウトだ。

 この世界の法律で大丈夫でも、泉 祐樹という日本人として生きてきた倫理観からすれば完全にアウト!スリーアウトチェンジなんてもんじゃなく、ゲームセット!全員退場で試合終了レベルじゃないか!これで不安にならない女性がいるなら見てみたい。いや男性でも怖いだろ!?)

 昨日の出来事をそう理解した瞬間、祐樹は椅子から立ち上がり、少女が座る隣にゆっくりと膝を落とした。

「昨日は火急の事態とはいえ、いきなり連れてきてすみませんでしたぁ!」

 それは、見事な土下座であった。

 異世界で土下座が理解されるかは置いておいて、そうせねば罪悪感に押しつぶされそうな祐樹にとって最適解であったといえるだろう。

 なお、リリーは一層、怯えた。

 当たり前である。

 これからどうするのかといった内容の話がされるのだろうということは察しがついていた。

 最悪捨てられるかもしれない、この人ならそんなことしないのではないか?と不安になっていたところに、いきなり、その主導権を握る人間が大きな声を出し床に這いつくばったのだから。

 謝っていることはわかる。わかるがその言葉の意味の理解より、いきなりの不可解な行動、恐怖の対象でしかなかった大きな声を出されたこと、その前から続く不安と緊張状態・・・。

 それらが合わさって、リリーは泣いた。

 それはもう親から離れた幼子が、号泣するごとくギャン泣きであった。


「あ、あのね!?捨てたりとかしないからね?うちにずっといていいから!」 

 ひとまず安心させるためにそう言ってリリーを抱き上げ、泣き叫ぶその背中を軽くトントンと叩く。

 まるで赤子にするようなことだが、幼子を相手にした経験などあまりないユウキにはそれ以外どうやって接したらいいのかわからなかった。

 リリーはこちらの胸に縋りつくように服を掻き抱いて、いやいやと首を振るように胸元を涙と鼻水で濡らしていく。

「あ゛ぁあ゛ぁん!」

 泣き叫ぶリリーは、途中からなぜ自分が泣いているのかわからなくなっていた。

 きっかけは大声だったと思う。

 だけれど、ユウキの対応から今までのような怖いことや痛いことはないと理解していた。

 ただ、抱きしめられて、小さいころにされたように父や母がしてくれたように背中を叩かれ、失ってしまったものが返って来たように感じられたのだ。

 泣いてもいいのだと、甘えてもよいのだとそう言ってくれているようなユウキの対応にリリーは泣いた。

 ユウキの胸の中で泣いて、泣いて、泣き疲れて声が出なくなるまで、今まで泣けなかった分を取り戻すように・・・・。

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