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温く優しい世界で  作者: シクラメン
一章 お金を稼ぐ難しさは社会の余裕に比例する
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2-2 浮かれすぎていました

 そんな風に浮かれていた自分を殴ってやりたい。

 なぜ私はその世界の常識というのを教えてもらうことを条件に付けなかったのか、どうやってこの先稼げばいいのか?転生なら子供や赤子からスタートではないのか?

 転送された家は、特に不信感を持たれている様子がないので幸いだが、浮かれすぎていたと実感する。

 前の世界の貯金はネット通販(神対応)で使えるが、この世界で稼がなければ4~5年で蓄えが尽きるだろう。

 そう考えていると、パソコンのメール管理ソフトがポンッと音を立てて新着を告げる。

 前の世界からメールが届くとも思えなかったが確認してみると、神様のお手伝いさんと名乗る人?からの説明であった。

「 親愛なる泉 祐樹様

 

 いきなりのメールで失礼いたします。

 神の補佐を務めている見習いと申します。

 初めての異世界いかがお過ごしでしょうか?


 そちらの世界に送るにあたり、自宅には周囲に溶け込むようカモフラージュ機能をつけさせていただきました。外から見る分には普通に見えますのでその世界でトラブルに巻き込まれることはないと自負しております。

 また、学資ローンや住宅ローンといった借金は死亡によって清算されたため、貯金の方はそのまま神様通販で使えるようにしております。

 使い方などわからなければこちらのメールアドレスまで返信してくださいね。

 あと、生前の生活スタイルからネット環境は必須だろうと思いましたので、こちらでも使えるように手配させていただきました。(月額無料です)

 一応、動画等ののアップデートなどはできないように、こちらでチェックさせていただきますが、送信データのみの閲覧となりますので、アダルトサイトなんかを見られても大丈夫です!

 ただ、元の世界の有料サービスを受ける場合はその金額が神様通販の残高から引かれますのでお気を付けください。

 水道、ガス、電気などの公共料金はこちらで管理しておりますので特にかかりませんが、無駄遣いはやめていただけると私的には助かります。


 最後になりましたが、うちのアホもとい神がご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。

 あなたの異世界ライフがよきものとなるようお祈りしております。」

  書かれている内容を確認し、名も知らぬ見習いさんとやらに感謝しつつ、通販の仕様を確認する。

 通販では日本の円とこの世界の通貨、王国通貨と交換ができるようで、レートは金貨=1万円、銀貨=1000円、銅貨=100円、大鉄銭=10円、小鉄銭=1円と大変わかりやすい。

 物の相場はわからないが目安にはなるだろう。

 ひとまずは貯金で食いつなげそうだが早めにお金を稼ぐ手段を見つけねばなるまい。

 老後の生活も併せて考えるなら60までに2~3000万円貯めておきたいところだ。

 まぁ、このまま家に引きこもっていてもどうにもならないので、せっかくのファンタジー世界だ。外に出てみよう。

 急かす気持ちを抑えながら、窓から街並みを眺め違和感がなさそうな服装を選ぶ。

 腰ひも付きのズボンに麻のシャツなどが多く、現代の布地でも化繊以外ならそこまで違和感は持たれないように思えた。

 しかし、買い物するには相場がわからないうえ、金貨などはいきなり出せば浮く可能性がある、銀貨を20枚、銅貨を10枚換金して家にあった巾着袋に入れ、まずは大通りに立ち並んだ店を眺めようと決める。

 言葉が通じるのか不安があったが行ってみると、呼び込みの声が日本語に聞こえた。

 そういったことを頼んでいなかった自分の迂闊さに冷や汗が出てくるが、そのあたり見習いさんがしっかり対応してくれていたようだ。

(見習いさん、ありがとう!)

 そう感謝しつつ値段を見る、食べ物の屋台は銅貨の絵が1枚ついている看板が多く、たまに2~3枚の絵がある看板があるくらいなので、500円もあれば十分満腹になりそうだ、衛生状態を考えてここで食べることはないだろうが、食事の相場は元の世界とそう変わらないようだ。

(わざわざ絵で書いてあるってことは識字率はそこまで高くないのかな?)

 そう思いながら屋台の並ぶ大通りを歩きながら観察する。

 立ち並んだ屋台を見てわかったのだが、腰に剣を刺した騎士?のような男が屋台に声をかけて何か紙を確認している。

 恐らく営業許可証のようなものがあるのだと思う。

 一通り見て回る間に何度か遭遇したので、無許可営業はリスクが高そうだ。

 恐らく税金などもきちんととっているのだろう。出なければ営業許可証を用いて管理する意味はあまりないのだから。

(くそっ、しっかりしてんな中世!)

 いざとなったら日本製品を路上販売してでも生活するつもりだったが、これでは難しそうだ。

 しかし、こんなところで躓いていても仕方がないので、次は酒場で情報を集めるとしよう。

 情報収集といえば酒場というのがファンタジーでも現代日本でも共 通のルールである。

 町の地図を頭に描きながら、大通りを進むとわかりやすいジョッキの看板があった。


「いらっしゃいませー、空いているお席にどうぞー」

 店に入るとかわいらしいとたくましいを足して2で割ったような赤毛の少女が笑顔で出迎えてくれた。 木造建築で長いカウンター席と6~10名程度で座れる四角い席がいくつか、なるほどある程度大きな店らしい。仕事帰りとみられるおじさんや、レザーメイルを着込んだお兄さんなどが飲み食いしているが、活気があっていい、雰囲気も悪くない。

(うはっ、鎧だ!冒険者とか居るのかな?モンスター討伐を生業にしてる人は結構いそうだけど)

 そんなことを思いながら注文を取りに来た少女に勇気を出して尋ねてみる。

「はじめましてユウキといいます、この町に来たばかりなんだけど、どこか働けるところないかな?」

 そういった人間が珍しくないのか、あっさりと答えてくれた。

「あら?おのぼりさん?上等な服を着てるから気まぐれなお貴族様かと思ったわ。私はシェリー、シェリーの実のように赤い髪だからシェリーよ」

 今の服装は上等なのか、確かに麻や綿が基本で無染色の服が多い。染色された服もどこか色合いにムラがあるように見える。

 ちょっと失敗したかもしれない。そう思うが、まぁ気にするほどではないだろう。半分冗談のようだし・・・。

「そうねぇ・・・、村から出てきたばかりなら冒険者組合か、商人組合で下請け仕事を探すといいわよ?」

 そういいながら、「出てきたばかりならあまり高いものだと後が辛いわね。これとこれとこれで、十分お腹一杯になると思うし、味は保証するわよ?どうする?」とメニューまで決めてくれた。

 メニュー自体はカタカナだったので読めたが、折角勧めてくれたのでそれを注文することにする。

 野菜のポトフに大きなライ麦パン(黒パン)、それにベーコンステーキが運ばれてきて、衛生面でも、味の面でも問題なさそうだと判断できたので、しばらくはここに通おうと思う。

 ユウキはチョロかった。


「おぃ」

 食べながらシェリーさんの姿を横目で追っていると、隣で飲んでいた無精髭だらけの熊の様なおじさんが話しかけてきた。

「兄ちゃんあんまりシェリーと仲良くすんじゃねーぞぉ、狙ってる奴が多いからな!」と何がおかしいのか笑う。

 そんなにわかりやすかっただろうか?

「あ、すいません。田舎から出てきたばかりで、仕事とかないか教えてもらってました。」と頭を下げる。

 おのぼりさんという言葉からわかるようにここは都会のようだ。地方から出てくるものも多いのだろう、カモフラージュとして田舎から出てきた若者を演じる。

 すると男はポカンとした目でこちらを見た後、また笑う。どうやら笑い上戸なようだ。

「兄ちゃん、村出身かよ。俺はボルドってんだ、普段は討伐を中心に冒険者やってんだ。冒険者の仕事でよかったら説明してやるぜ」

「え?ほんとですか!?ありがとうございます」

 そう言って頭を下げると、また笑う。あまりに笑うので不思議そうな顔をしていると「あぁ、小奇麗ななりしてるのに、俺たちみたいな冒険者に腰が低いのが珍しくてな。貴族や、大手の商人なんかは冒険者ってだけで犯罪者みてぇな目で見やがるからな」と説明してくれた。

「冒険者組合ってのは浮浪者なんかの救済組織でもあってな、魔物と戦えなくても町の清掃や肥え桶の回収作業なんかの底辺仕事だってあるんだ。商人組合だと 荷運び人夫、採石場の工夫みてぇな仕事も紹介してる。基本的に商人組合のほうが日数がかかって自由度が低いし、いい仕事は早いもん勝ちのコネや信用がある やつが有利だ。」

「冒険者組合はそうじゃないんですか?」

「こっちは実力勝負だな、討伐記録からランクが決められるからあまりランクが低い仕事は受けられねぇ、魔石の買取もしてるから仕事がなくなることはねぇな。ただ稼ぐには危険がつきものだけどな」

 結局はコネかランクの違いしかねぇのさとボルドは酒を呷る。

 どうやら、初級、中級、上級と大まかに分かれており、その区分の依頼しか受注できないようだ。

 ただ、依頼はいつでもあるわけではなく、ほとんどの冒険者は街の外で魔物を狩るか、ダンジョンで魔物を狩り、魔石を回収して生活しているらしい。

 ボルドとは他にもいろいろ話した。この世界は中世を基調にしたファンタジーのようで、トイレはボットン便所、溜め桶を農家や初級冒険者が回収にきて、おがくずと混ぜて肥料にしているらしい。

 風呂は公衆浴場という名のサウナが街に一つ、貴族クラスになるとサウナ室や浴槽のあるタイプの風呂を持っているものもいるらしい。

 濡れタオルで拭うだけを基本としているため、たまに石鹸を使う程度の庶民は我慢できないほどではないが少し臭う。ボルドも少し汗臭かったが気になるほどではなかった。冒険者はどうしても血の臭いがつくためこまめに水で体を拭うし、臭い消しとして石鹸を使用する頻度も多いそうだ。

 あとは魔法だが、これはいくつか魔法書というのがありそれを読むことで誰でも使えるらしい。効果は適正によって大きく変わり、魔法書は覚えてしまった人の中古の品が多く出るので金貨1枚~5枚くらいで買えるらしい。

 また冒険者組合の場所や、近くの良心的な武器具店、怪我をした際の対処法や準備しておいた方がいい諸々を教えてくれた。

「なんでそこまで親切にしてくれるんですか?」と聞くと

「村出身者は出てきたばっかの時は苦労すんだ。金もねぇ、稼ぐ手段もねぇ、寝る場所だってありゃしねぇ、路地裏で雑魚寝暮らしが上等だ。下手に金持ってりゃボコられてそのまま神の身元へって感じだからな」

と、しみじみ語る。

「おめぇは身なりもいいし酒場で飯も食える。金持たせてくれただけいい両親だったんだろうが、そういうのが真っ先にカモにされちまうからな」

「まーた、ボルドの説教が始まったよ、お兄さんも気をつけなよ?こいつ話が長いからさ」とシェリーが笑いながら通り過ぎる。

「はん、若い奴らに説教して感謝されてんだ。長いくらいがちょうどいいんだ」とボルドは笑う。

 以前の職場がここみたいだったらどれだけ幸せだったか、夕食はここに来るようにしよう。

 ユウキはすごくチョロかった。

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