第伍幕 ~父子~
「どうぞ、お入り下さい」
「失礼する。 ……千歳丸」
「……お久しぶりです、父上」
「儂を許してくれ、すまぬ」
「ち、父上! 頭など下げないで下さい!」
「千歳丸、儂はお主らに一言謝りたかったのだ、子を捨てた親の謝罪じゃ」
「……父上、私は捨てられたとは思っておりませぬ」
「千歳丸……」
「父上も、千歳丸もそれぐらいにしておきましょう、久々に集まったのです、母も交えて食事にしましょう、万吉!」
「はは!」
「至急、食事の用意を」
「御意」
その後、彼らのはは慶寿院と共に食事になったのであった
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慶寿院は義輝、義昭の生母である
彼女は夫、義晴の仕事、義輝を支え幕政に関与した
最後は永禄の変の際、義輝共々死亡する
彼女は近衛家の生まれであり、関白近衛稙家とは血縁関係であった
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食事後
「千歳丸は帰ったのか?」
「はい、父上」
「どうであった?」
「そうですね、特には問題ないと思います」
「そうか……」
「父上?」
「菊童丸、我々は覚悟を決めねばならん」
「……三好ですか」
「左様、右京大夫(細川晴元)と筑前守(三好長慶)と関係が芳しくない、下手をすれば戦となろう」
「しかし、筑前守は右京大夫殿が大丈夫と」
「筑前守と右京大夫の関係は良いように見えて底が暗い、知っておろう、既に筑前守は兵を起こしておる、何故、右京大夫殿は大丈夫だと言うのか……」
「はい……それは思っておりました」
「我々も筑前守、右京大夫、双方と槍を構えた事もある、どうなるかはわからん、菊童丸いや、将軍、千歳丸は足る器か?」
「はい」