第肆幕 ~足利義輝~
兄の義輝は茶室で待っていた
「兄上、お久しゅうございます、お元気そうで何よりです」
「千歳丸も元気そうだな」
「ええ、向こうでは良くして貰っていますので」
「父上が仰っていたのだが、お前には辛い思いをさせてしまったと」
「私も少しは成長して周りが見えるようになりました、将軍家に私達を養う余裕が無かったこと、本来なら口減らしされても可笑しくない状況なのに、ここまで生きてこれた事に寧ろ父上の愛を感じます」
「千歳丸…変わったな」
「そうでしょうか? 先程、万吉には全く変わってないと言われましたが」
「本質は変わっていないのだろう、それは分かる、しかし、意識が変わったと言うべきかそんな感じがする」
「それは……」
「それに、私も無能では無い、千歳丸、言いたい事があるのであろう?」
「兄上……」
「父上もそのうちやって来よう、父に聞かれたく無いのではないのか?」
(流石将軍になる奴は違うな、人を見極める事が一番大切な立場では有るから当然といえば当然、それに実際父が存命中に譲位されている事実を鑑みても分かる)
「私は、武士になりたいです」
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さてさて、先程の千歳丸の話には驚きました
まさか還俗して、武士になりたいと
しかし、私も言いましたが、それは危険な賭けですよ
まあ、もし成功したなら私は千歳丸に仕えたいですが
しかし、変わりませんねあの方は
思い立ったらすぐ行動、もう少し考えて行動してほしいものです
なるようになるでしょう
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「武士にか」
「はい」
「それが与える弊害は考えたのか?」
「一応は」
「言ってみよ」
「兄上に将軍位を狙っていると思われる事、周囲の大名が私を使って傀儡政権を作る可能性、後は私の暗殺の可能性などでしょうか」
「……それだけわかっていて尚武士にか?」
「すぐではありませんので」
「どういう意味だ?」
「元服までは寺にいます」
「そうか、考えておく」
「一つだけ」
「何だ?」
「私は将軍には興味は無いので」
「私はか」
「はい」
「ははは!」
「兄上?」
「何があった?」
「え?」
「お主、千歳丸か?」
「どういう意味ですか?」
「ははは、よい、今はな」
「?」
「菊童丸、入るぞ」