第参幕 ~細川藤孝~
俺の兄貴である足利義輝はこのときはまだ足利義藤と名乗ってるはずだな
それと、この時代は義輝とか義晴とかいう名前は諱と呼ばれ、呼ぶこと自体が失礼に値するものだったらしい
だから、基本的には家族は父や兄、そのほかの人は官職、受領といったもので呼んでいた、あとは通称と呼ばれるあだ名みたいなもの
だから、今、将軍に俺が来たと伝えに行ってる細川藤考も細川与一郎か、幼名の万吉って呼ばないといけない
まあ、俺こと義昭と藤考が仲が良かったどうかはわからないから今回判断しないといけないんだけどな
さて、藤考は元服して今は14歳、まあ、俺の案内役だろうな
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旧二条城
「父上、千歳丸が訪れて来ていると先ほど万吉が伝えて来ました」
「何? あいつは出家している身のはずだが」
「なんでも、今回の快癒祝いに外出を許可されたと」
「ほう、それで儂らに会いに来たのか」
「そのようで」
「しかし、儂は千歳丸にあわす顔がない、菊童丸会ってくれるか?」
「ええ、勿論、私の弟ですから」
「儂が入ってもよさそうならば控えている者に伝えてくれ」
「はい」
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旧二条城客間
「しかし、覚慶様よ、よかったのか?」
「ん? どういうことだい?」
「我が12の時は家族に会うより遊びたかった思い出があるぞ」
「確かにそうなんだけどな……」
「ん?」
「いや、少し家族が恋しくてな」
「ふむ、我は生まれも育ちも宝蔵院なのでな、その思いが分からぬのだ」
「まあ、分かる時が来ると思うよ」
「だといいのだがな」
襖が開き万吉が入ってきた
「覚慶殿、いえ、千歳丸様、お久しぶりです」
「万吉、元気だったか?」
「ええ、あと、私は元服いたしまして、公方様より偏諱を受けまして藤考となりました」
「その席に同席できなくて残念だったよ、俺は何と呼べば?」
「千歳丸、そんな固いのは止めましょうよ」
「そうだな万吉」
「しかし、よく出てこれましたね」
「まあな、そこは俺の人徳が」
「はあ、さる筋からの話だと人が変わられたと聞いていましたが、何も変わりませんね」
「ん?(義昭もこんな感じだったのか?)」
「7年前もそのような感じでしたよ」
「……(マジでか)」
「私は馬鹿なことを共に出来る人が居なくなったのでここのところつまらなかったですが一度出てくればいくらでも坊主の目は掻い潜れますからね」
「万吉お前」
「また、遊びに行きますよ、では、公方様の所へ向かいましょう」
「ああ」
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義藤自室
「さて、私の弟はどのように変わったのでしょうね?」
時の将軍はそう呟いた