表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/21

第拾伍幕  ~伊賀の国~

=========================================

伊賀国

この国は守護仁木氏が治める国である、しかしこの仁木氏の影響力は低く、地侍達の割拠する地域となっていた。

この地侍の筆頭が服部氏・百地氏でありこれに藤林氏を加えた三家を別名伊賀三上忍と呼ぶ。

基本的にこれらの地侍達の合議によりこの国の運営は行われ、守護の仁木氏は服部氏の勢力であった。

史実ではこの合議が上手く機能していたとされるが、服部氏が伊賀を捨てていることからこの物語においては仲たがいがあったということにする。

服部・仁木氏は伊賀西部、百地氏は伊賀南部、藤林氏は伊賀東部に勢力をもっていた。

========================================


伊賀 仁木館


「殿、客です」


「だれだ?」


「服部半蔵殿です」


「何? わかった通せ」


「はは!」


ここは伊賀守護仁木氏の館である

館の家主は伊賀守護、仁木(にっき)左京大夫長政である

この館を訪れていたのは、一般的に服部半蔵と呼ばれる服部半蔵正成ではなく、彼の父の服部半蔵保長である


「表を上げよ」


「はは」


「どうしたのだ半蔵?」


「一大事です、山城の足利大和守がこの伊賀に向けて1000の軍勢で攻め込む用意をしているとのこと」


「なんだと!」


「我らの軍は左京大夫様の兵を合わせても1100、かなりの劣勢になるかと……」


「なぜ、なぜこの時期になのだ!」


「どうやら、百地が興福寺に援軍を頼んだ節があります……」


「だとすれば、我々は挟み撃ちに合うではないか!」


「そのようで……」

「そのようでではない! 半蔵、お主は足利将軍家に仕えていたのではないのか!」


「そうですが、今、大和守は将軍家とも縁を切っている次第で、情報が遅れました……」


「……お主をせめても仕方がないな」


「申し訳ありません」


「仕方がない……兵を戻そう」


「それしかありませぬな……」


仁木氏と服部氏は反抗的な態度を示していた百地氏に兵を向け、臣従を迫っていた

作戦は順調に進んでおり、後一郡を攻めれば百地氏は臣従せざるを得ない状態だったのである


藤林氏はこの両者の仲裁を図っていたのだが、一番勢力が弱く、双方聞く耳を持っていなかったのである



仁木館 館外


「もう、ここにはおれまい……」


「そうですな、守護があのような方では……」


「左京大夫が悪いわけではないのだ、この国が悪いのだ」


「半蔵様……」


「いくら家を大きくしても、飢えは一向になくならん! この国はそもそも住むに値しないのだ!」


服部氏は伊賀では随一の家であったがこの国は貧しい

そのためこの国を出ていくつもりでいたのだった


「まあ、この戦がいい機会となるであろう」


「そうですな」


服部氏は既にこの戦をあきらめていたのだった


彼らは素破

周辺事情を把握し、状況を正しく理解できる者たちだ


百地氏の兵600も健在であることもわかっている今、勝ち目はほぼないのである

また、藤林氏にも百地氏から人が出入りしているとの情報もあり、四面楚歌の状況の可能性もあったのだ


故に彼らは一族を上げてこの国を出る決意を固めていたのだった



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ