第拾肆幕 ~思惑~
彼らの会話についてだが
簡単に言えば次の通りである
1.筒井順慶、島左近、松倉右近は義秋方となる
2.その見返りとしてこの戦により得た義秋の領地の統括を彼らに任せる
3.大和の国は興福寺の勢力が強いため、筒井家という僧の出である統治者の方が都合がよい
4.そもそも順慶の父の家臣であった島左近、松倉右近は順政、順国に従いたくない
5.なので義秋についた方がいい、因みに数は兵の数だ
以上は筒井家の話
1.自らの勢力が増えるなら直轄じゃなくてもいい
2.敵は少ない方がいい
3.できれば、公方方を刺激したくない
4.興福寺との同盟があるのでそれを三好に知られたくない
5.主力を南に回したくない
これは義秋の考えである
この戦では細川京兆家・足利将軍家・六角家の援軍が来ないと言い切れる材料が無い為、北の備えは厚くしておきたいと考えていた
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三好の客将の十河左衛門尉は既に命を受け兵1000と共に出陣していた
ともに従軍していたのは真木島信濃守である
「しかし、大和守殿はどうしてここを攻めるのだ?」
「殿には殿の考えがあるのでしょう」
彼らが出陣した先、それは伊賀である、これは興福寺との同盟の条件でもあった
ちなみに、全く関係ないが義秋には屋形号は与えられていない
なので『殿』呼びなのである
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槇島城にて
「しかし、千歳丸、何故伊賀なのです?」
「ああ、あれな百地殿の要請だ」
「伊賀の三大豪族の一人ですか」
「なんでも、服部党の攻撃が厳しいらしい」
「殿、お言葉ですがそうであるなら服部党に加勢する方がいいのでは?」
「ああ、これは俺の勘だ」
「……」
「そんな顔するなよ」
「しかし、どうして彼らにそれを伝えなかったのですか?」
「ん? その事か、よく考えてみろ、戦端を開くのは愚策だろ?」
「まあそうですけど」
「あの軍は伊賀を通り、越智家に行く予定だ」
「……間に合います?」
「別に間に合わなくてもいいんだけどな」
「少し嫌な予感が……」
ちなみに、百地家には事の詳細は伝わっているが……
十河は攻める気満々であったのだ