第玖幕 ~興利同盟~
山城南部は大和と隣接している
そして、大和北部は興福寺の寺領であった
興福寺
「ふむ、同盟かの」
「ああ」
「確かに、儂と大和守様との間に確執もないからのう、寧ろ友好関係じゃからな」
「こちらとしても、言い方は悪いが南部の安全の確保は重要な事案だ」
「確かにのう」
「ゆくゆくは、筒井から大和の実権を奪いたいが……ああ、これは独り言だけどな」
「はて、なんのことやら」
「別当、兵はいくら出せる?」
「3000は確約しよう」
「多いな」
「寺領は3万石はある、妥当じゃよ」
「胤栄はいるか?」
「ふむ……連れて行くか?」
「彼がいいといえば」
「呼んでまいれ」
「ははっ」
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京 和田氏邸
「これは、万吉! いきなりどうした?」
「貴方が京に残っていると聞きましてね」
「それだけではないのだろう?」
「ええ」
「仕えるに値するのか?」
「少なくとも私はそう思いますね」
「お前がそう思う時点で及第点だろうがな」
「はて?」
「まあいい、公方様にも、『もしお前に士官の話が来れば乗れ』と言われてるからな」
「公方様も心配症ですね」
「違いない、罠だの囮だの言っているが表面だけだよあの方は」
「そうですね」
「で、槇島か?」
「はい」
「その地に接する近江の山岡領を現在の和田領を六角に渡す代わりに貰える手はずになっている、家臣も領民も移動中だ」
「六角が?」
「ああ、そして代わりに新庄を抑えても黙認するだとよ」
「そういうことですか」
「これで、大和守の所領は8万石ってところか?」
「理想値ですがね」
「理想値?」
「ええ、帳簿では各城の生産可能の上限が報告されていますが、現状はその半分にも満たないでしょう、いま、見直しをさせているところですが、まあ半分ぐらいでしょうね」
「で、俺には何をしろと?」
「城を作って欲しいのですよ」
「城、だと?」
「はい」
「諜報ではなく?」
「今は大丈夫です」
「興福寺経由か」
「流石ですね」
「で、千歳丸が交渉中と」
「ええ」
「任された、和田弾正忠惟政以下500名、今日より大和守様を主君と仰ぐ」
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興福寺
「胤栄、よいのか?」
「覚慶様には申し訳ないが、我は武士になる気はないのだ」
「なら仕方がない」
「我がもし、武士になると決めたらこの足で覚慶様に見えに行く、その時までも我が欲しいと言うなら仕えさせて頂く」
「わかった」
「では覚慶様、別当、これで」
そう言って胤栄は出ていった
「まあ、胤栄は仕方ないのう」
「ああ」
「大和守様、同盟にあたって一つお願いしたい」
「なんだ?」
「儂の姪を娶って頂きたい」
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兼継
室町大納言と呼ばれた、町広光の次男
広橋兼顕に長男共々養子に出される
町家を継いだのは高辻家より養子に入った町資将である
姪とはこの町資将の娘であり現在六歳である
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「姪?」
「うむ、権中納言町資将の長女じゃ」
「何故だ?」
「あやつは何故か逐電しよった、この娘と嫡男を置いての、儂が長女を預かったのじゃが、このままではとおもってのう」
「ふむ」
「どうかの?」
「分かった」
こうして俺は6歳の婚約者が出来たのだった