第零幕 ~足利義明~
『五月雨は 露か涙か 不如帰 我が名をあげよ 雲の上まで』
我は果たしてこの句のように名を残せたのだろうか?
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20XX年
とある高校にて
「こうして、足利義輝公は永禄の変にて三好勢の攻撃を受け、剣豪将軍としてその名に恥じない最後を迎えた。 この後、三好の傀儡将軍足利義栄そして最後の室町将軍足利義昭と続く。 よし、今日はここまでだ、次の授業は織田信長から始めるから、予習したいやつはしておけ」
俺は今、高校で日本史を教えている
名前は足利義明
年は30歳
そして独身
最後の重要だから覚えておくように!
という冗談はさておき、まあ、あの有名な義昭とは一字違いというから友達からは将軍なんて呼ばれていた
まあ、知らないと思うけど、この名前の人は戦国時代には実在してるんだよなこれが
その足利義明は今の千葉県の小弓というところに若干の勢力を持っていたから小弓公方なんて呼ばれていたりした、まあ当の本人は後北条との戦いで戦死するんだけど
さて、明日からはゴールデンウィークだし、趣味の城めぐりでもするか……
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五月五日
久しぶりやってきました、二条城!
城というよりはやはり御所としての貫録があるな此処は
まあ、そういう城もいいよな、現存はしてないけど、伏見城も似たような造りだったらしいし
さて、次はどこにいこうか
ん?
「危ない!」
俺の目の前にいた修学旅行生らしき女生徒の上から瓦が落ちてきていた
「くっ!」
彼女は気づいていないのかよけようとしていな
(ええい! ままよ!)
ドッ ガシャン
「ちょ! 何するんです……って……きゃあああああ」
「だ……大丈夫……か?」
「私は大丈夫ですけど! 頭から血が!」
「はは……違……う……学校……だが……生徒を……守っ……て、逝ける……なら……本望だ……な」
「な、何言ってるんですか! 早く救急車を!」
(かっ、もう意識が途切れてきて、彼女が何言ってるのか分からねえ)
「…! …!」
(なんか叫んでるみたいだけど、この様子じゃ俺はもう長くねえな、はは)
「………! ………、ん……」
(ああ、もう視界が……)
「足利義昭さん、逝ってらっしゃい。」
驚いて俺が最後に見たのはそう言った彼女の笑顔と、生気のない目だった