キジムナー
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夢、それは夢である。
自分の故郷が燃える夢。
夜中とは思えぬ明るさがあった。
あかるく、あかるく、燃えていた。
ソレを小高い丘でみていた。
一人ではなく、隣で見るのは、異形の鬼子。
赤い髪の鬼の子。
顔は見えず、ただその口元には牙が生えていた。
自分は一歩も動けず、動く事ができずその光景を見るしかなかった。
涙もでずに、ただただ苦しいと感じることはできても。
それを言葉に、声にすることは叶わない。
鬼子はいう、これは過去のことだと。
お前が生まれる前の出来事だと。
そしてお前の心ではないのだと。
だから何もできないと。
何もする必要はないと。
鬼子は自分を撫でた。
木である自分を撫でた。
きっと足元に埋められた人の骨が見せた夢だろうと。
それでも何もできぬのはいやだと言った。
鬼子は黙ったままであったが、しばらくするとこういった。
頑張れと。
そこで夢は途切れる。
体全体がねっとりと汗をかいている。
そして、わけのわからぬまま自分の家からでた。
火を起こそうとしている輩と目が合った。
そのものは、飛び出すように逃出した。
火を消しながら、あの夢はコレを暗示していたと思った。
男は安堵とともに、遠くをみる。
遠く、遠く、小高い丘のほうを見る。
何者かと目が合ったような気がした。
男は後に大木を植える。
あの鬼子に感謝をこめて。