表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/660

旅路の終点に

 

始めの駅を出発してから

どれだけの時間が過ぎたのだろうか


暗闇に映る嗄れた顔は

それこそ若くないことを示している

幾星霜の軌跡を経て

既に夢見の私であった


汽車の音は響き続ける

駅に着く度に

人は去りそして増える


いつか見た2人の少年を思い出す

彼らは天頂へ行ったと聞く

もう遥か昔の話である


あの頃の私はまだ若かった


様々な駅に降りては

その地方を旅して

時には居着くことさえあった


駅に着くごとに私は歳を取り

そしてもはや陽炎の如く


嗄れた手は震えて

出る声さえも嗄れる

もう若さなど残ってはいない


汽車の音が鳴る

駅に着いた合図


私は杖をついて立ち上がる

荷物などはない必要ないのだから

切符を片手にホームへ降りる


幾年の歳月を経て

たどり着いた終点

そこは薄暗く何もない


ぽっかりと空いた階段を

私はひとつひとつ上がっていく

暗闇はまだ続き

それは果てのない旅路


ふと足を止めて振り返る

その先に道はない

暗闇が口を開けて微笑んでいるだけだ


私はまた歩み始めて階段を上る

ひとつの旅が終わって

またひとつの旅が始まった


しかしこれが本当に最期の道である


いつかの少年が目指した天頂は

この先である



 

モチーフは宮沢賢治作「銀河鉄道の夜」です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ