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この世をさ迷う彼へ
彼に天国はなく
彼に地獄はなく
途方もない時を彷徨い歩く
かつての明かりは未だに燃え続けて
記憶の断片を語り継いでいる
光や明かりや彼を灯す命なれ
死してようやく後悔を知った彼は
途方もない旅路を行く
彼はどこにいるのだろうか
私には分からない
契約の代償に支払ったものは
あまりに大きいものだった
どこに行くこともできずにさ迷う彼は
目の前で消えかけているかがり火のよう
そこに私は火を継ぎ足そう
私は悪魔
彼と契約を交わした悪魔
汝や
永久に彷徨う哀しき魂
私は永久ここにいよう
いずれまた会うときまで
ここで待ち続けよう
汝に死後の安らぎがあることを願おう