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名も亡き者へ
無縁の坂にともる魂よ
どうかその名を私に教えてくれないか
それは燈籠に明かりをともす御霊火
墓や帳に名を記されない哀しき人々よ
私は永久にその名を語り継ごうか
手を差し伸べても届くことのないこの手を
私は握りしめて燈籠に明かりをともそう
紅い光がやがて坂を彩るだろう
弔いという大層なことは出来ない
その遺影を紡ぐことも出来ない
私に出来るのはただ名を語り継ぐことだけ
名も亡き者の名前を私は記録しよう
移り変わり時代はやがて夜に帰る
いずれは名前を亡くしてしまうだろう
死してなお独りはあまりに悲しい
私は寄り添うことは出来ない
ましてや慰めることも出来ない
私はただ燈籠に明かりをつけよう
名前を亡くした者へ送る御霊火よ
どうか明日へと導いてくれ
名前を亡くした者へ
私は貴方の名前を語り継ごう