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老いる声
子どもの声 大人の声
大きなるにつれて
離れていく声が
いつからか聞こえなくなった
朝のさえずりも 轍の喧騒も
街に溢れていた雑音さえも
今は聞こえないほど
遠ざかってしまった
それは成長したからなのか
それとも老いたからなのか
ぼやけていく視界の中で
名前のない落とし物を探すよう
ふらふらと足が動き出す
静寂を愛するようになった
孤独を受け入れるようになった
それでもわずかな寂しさが
心を掴んで離さない
自らの声さえ聞こえなくなった時
そこには何が残っているのか
不確かな不安の中でただ一人
遠ざかる声に耳を傾けよう
それが遅いと知っていても




