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かくしあめ
暮明の机の上 開きかけのノート
雨粒のように言葉が零れる度
ページの上に滴る嗚咽
滲み出した本音が心を突き刺す
鈍く窓を叩く泥濘の音
感情を少しずつ濁らせて
不快感にずぶ濡れていく
びしょ濡れの手で何を書けるのか
心臓さえも冷えるような
脈拍の中で惰性にもがく
見上げた曇天 夕時雨が鳴く
吐き出した濁水を抑えて
ある雨の日のこと
窓から覗き込んだ影よ
ずぶ濡れの髪をかきあげて
その目で見てはくれないか
双眸に染み込む混濁の明かり
ゆらゆらと手元から伸びる影を
薄っすらと隠して
静寂の中でノートが破れた




