654/660
はなかすみ
真昼の光 のどかな萌しに誘われて
かすかに聴こえる 鼻歌交じりの暖かさ
そよ風に手を引かれて迷い込む
緩んでいく景色の中 入り込む白昼夢
鮮やかな夢はなくて 現実が続く
それでも感じた夢心地
見知らぬ雲を追いかけたなら
嘘も真実もとろけていく
陽が燻ぶる まどろみを焚いて
透けた熱が生命を帯びた
視界が揺れる度に在りし日は遠のく
また一つ 夢の終わりを見届けて
桜色の日差しが身体を包む
寒さを忘れさせるほど心地よく
街角を曲がる度 重なる郷愁
軽やかな身なりでまだ行こう
影をすり抜けていく人たち
見知っては忘れていく影法師
きっと誰も気付かずおとぎ話の中に
花霞に誘われた真昼のこと




