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朝昏の影(きみ)
睡気の中を歩き出す
冷えた手がまぶたを叩く
寒空の下を行く影
僕を追い越していった
かじかむ言葉が耳に響く
独り言のように空へ消えて
口から吐き出た命を
見向きもせずに暗闇へ見送る
すり減る温もりも積もる寒さも
等しく僕の心身を包み込む
真後ろから吹き抜けた木枯らし
視界を隠していた雲を吹き飛ばす
目覚めの先で落ち合おうか
暗闇の街へ消えていく影よ
今は僕が追う側になってしまった
終わることのない鬼ごっこに興じよう
微睡みの中で走り出す
冷えた手で頬をなでる
寒空の下で影を探そう
街の灯りが消えだした時
是非最後の行から反転して読んでみてください。